「どこへも行かないで」
ぐるぐる廻る思考に踊らされる。
あなたといると、いつもそう。嫉妬して、嫌なこと考えて、そんな自分に嫌悪して、思考がぐるぐるぐるぐる廻ってる。あなたのことを考えると、きりがない。自分の気持ちについて考えはじめると、きりがない。私はきっと、自分と1番仲が良かった時のあなたが好きなんだと思う。最近気がついた。いや、ほんとはずっと気づいてた。あの時のあなたに執着しているだけなんだって。でも、あなたの姿を見ると、喋っているのを見ると、たまらなく愛おしくなる。そんな時、いつも思い出すのはあの時のあなた。私に自分から話しかけてきてくれて、電話をかけてきてくれて、遊びに誘ってくれて、でも自分はあんな態度をとってしまった、嫌なことを言って傷つけた。やり直したい。離れていってほしくなかった。ずっと私のそばにいて。どこへも行かないで。
「君の背中を追って」
「好き、嫌い、」
好き、嫌い、わかんなくなる。
私は本を読むことが好き、たぶん。
私はこの理不尽な世界が嫌い、たぶん。
私は雨が降っているのが好き、たぶん。
私は暑いのが嫌い、たぶん。
私は1人でいるのが好き、たぶん。
私はみんなで仲良くしようって言う人が嫌い、たぶん。
私は廃墟の写真を見るのが好き、たぶん。
私はうるさい音が嫌い、たぶん。
私は狭いところが好き、たぶん。
私は外で遊ぶのが嫌い、たぶん。
私はあなたのことが好き、たぶん。
私は自分のことが嫌い、たぶん。
「雨の香り、涙の跡」
「雨の香りがする」彼女はよくそう言っていた。彼女がそう言った後、いつも本当に雨が降っていたから、彼女には本当に雨の匂いというものがわかったのだろう。思えば、彼女と2人で会うとき、いつも雨が降っていた。だからだろう、私にとって雨は特別なものだ。
でも今日は、雨が降ることに気づけなかった。もちろん、理由は隣にあなたがいないからだ。きっと、今日はあなたと会うことができる最後の日。あなたは花に埋もれていて、急な雨にも安らかな顔をしている。
頬をつたう雫も、きっと雨のせい。
「糸」
屋上のフェンスに手を乗せ、体重をかける。
もうこんな人生うんざりだ。
酒に浸って子供に暴力を振るう親。ギャーギャー囃し立てて、自分が上に立っていると思い込んでるクラスメイト。見て見ぬ振りして、理不尽な講釈だけ垂れ流す教師。開けない夜はないだとか、人生いつかは楽しく思える日が来るだとか、そう言う人は大した苦痛なんて味わってはいないのだろう。私にとっては、今が全て。被害者が逃げるなんて、とか言う人がいるけど、逃げることの何が悪い。楽になりたいと思うことの何が悪い。
こんな世界、大嫌いだ。
地面が近づいてきて、すぐ目の前に迫った時、何か、ぷつりと糸が切れたような気がした。