徹夜して迎えた午前五時ってほんとに朝なの?楽しいことは夜に遺っている。朝目覚めるために眠った日が直近で何日あったんだろう。楽しい勘違いをするのもそろそろ疲れた?
忘れてないだろうか。錆びた鉄の階段と、唇を切ったときの味が似ていたこと。夏祭りでヨーヨーが欲しかったこと。貰った金色の折り紙でできたメダルを偽物だった、って思う側だっただろうか…思わなかったろうか。
子供みたいに夢を見せて---サンタクロースは信じられているから存在するんだろう---、神様みたいに。夢は幻想を現実から守る門番だった。ひとつだって嘘にしないでほしい。
失ったものを探していて僕は迷子になってばっかりだ。もう出発した汽車にはどう駆け回っても会えないや。駅のホームで泣いてる大人から目を逸らす遠回りを、「冷たい人間!」と詰るのも、…汽笛が鳴る。別れの音、車掌さんの指先に罪はないよ。どこにもいない、どこにもいかない、時間だけはここに置いてって。留まり続けるためには走り続けなくちゃいけなくて、美しいものになりたくて蝋の羽が溶けるまで、
地元で雪が積もったのは数年に一度の話だったのに、工業汚染物質を核にこの街を白く染め上げるオートクチュールは、おなじ星にも違う景色を見せる優しい嘘にほとんど近似値。誰も見向きのしない光、誰がためになるエンゲージリングなのか求める者しか知らない。形を持っていないから。燃え尽きた光だから。
冷凍庫が壊れたからアイスを一ヶ月も食べていない。家まで持ち帰れる暑さにも中々ならない。残暑だって。でも秋分が来たよ、って。今秋なんて呼んだら向こうだってちょっと気まずいって思うよ。
救急車のサイレンを聞くことが減ったなあ。秋がもし今年は来るのなら、近くの公園にピクニックに行ってみたいなあ。思ってるだけじゃなくってさ。
秋口の恋は続きやすいって噂の当事者になることなんてたぶん一生ないけど、それでも秋は美味しいし結構好きだ。こっくりと熟れた果実みたいな色が街を覆って、今が一番食べごろだよって教えてるんだ。
マスカット味の板ガムを柔らかくなるまで噛んで、甘酸っぱい気持ちみたいな作りものの味で心を満たした。花はなんで咲いたら枯れてしまうんだろうね?
「だめだよ。さいごばかり見ていたらほとんどを見逃してしまうでしょう」
うさぎが月でついてる餅は誰が食べるんだろうね。大福の中に入ってる果物って酸っぱくないですか。ぷちゅっとあふれる果汁が痛みみたい、でも嬉しくて、いたみだして潰れちゃう心を、大事にしたい。
わあ、幸せ!鍵を探し当ててしまった。旅の結末を迎えて扉がきぃと開いてしまったみたいだ!これがエモーショナルの頂点だね。上がりきってしまえば下がる温度。ああどうか時間よ止まれ!積み木を崩さないで!
不安定だ。ミルク溜まりの迷宮を指先のスプーンで転がした、砂糖よりははちみつが好きだ、このときは。夢見る獏みたいに眠りに矛盾を抱えてしまうけどほんの人生を歌うように鳴らす銀のベル。
おさない夢は覚めてそのことを嘆くばかりしないで、手のひらに握った一番星でふわふわのクリームを買おう。それでがんばってかき混ぜて、とびきりのケーキを贈りましょう!そんな素敵な未来が来るから!終わりなんかじゃないから!!