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 失ったものを探していて僕は迷子になってばっかりだ。もう出発した汽車にはどう駆け回っても会えないや。駅のホームで泣いてる大人から目を逸らす遠回りを、「冷たい人間!」と詰るのも、…汽笛が鳴る。別れの音、車掌さんの指先に罪はないよ。どこにもいない、どこにもいかない、時間だけはここに置いてって。留まり続けるためには走り続けなくちゃいけなくて、美しいものになりたくて蝋の羽が溶けるまで、
 地元で雪が積もったのは数年に一度の話だったのに、工業汚染物質を核にこの街を白く染め上げるオートクチュールは、おなじ星にも違う景色を見せる優しい嘘にほとんど近似値。誰も見向きのしない光、誰がためになるエンゲージリングなのか求める者しか知らない。形を持っていないから。燃え尽きた光だから。

9/24/2024, 11:22:50 AM