『推し』というのはなんとも不思議な存在で
私の他にも好きな人はいるのだろうに自分が一番好きと錯覚する
推しへの愛が強いせいか
はたまたこれは私だけなのか
愛を注げば注ぐほど
また好きになる
それが抜け出せなくなる頃には
貴方の虜になっている合図かもしれない
『愛を注いで』
仲間
それは選べるものではなくて
この人はこんな事しないだろう、この人にならこれを言われても許せる、と
思った時に初めて
仲間が出来るんだと思う
互いに高めあえるライバルみたいな存在
いつか私もそんな人が来るだろう
ふいに手を握られた
びっくりして君を見るとちょっと照れくさそうに笑っていた
私は苦笑して手を握り返す
でも嫌ではなかった
むしろ嬉しかったんだ
君から手を繋いで来てくれることは今までなかったし、私もそれは理解していた
恋人どうしでは当たり前のようなことかも知れないけど私達はどこか違った
手を繋いで歩くことは今の私を世界一幸せな気分にさせた
このまま時が止まればいいのに、と思った日であった
「手を繋いで」
病院のベッドでぐったりと横たわる君
ついこの前まではあんなに元気だったのに
君との思い出が走馬灯のように出てきた
赤く腫れた目をまた涙が濡らす
ハンカチはぐしょぐしょで使い物にならなかった
どうして救えなかったのか
自分の身を犠牲にしてまで私を守ってくれた
悔しくてしょうがなかった
1度でいいから目を覚まして欲しい
声を聞かせて欲しい
そんな願いが届いたのか
うっすらと瞼が開いた
言いたいことは沢山あったけど
これだけは言う
「ありがとう、ごめんね、」
君は少し笑みを浮かべて
また瞼を閉じた
もう二度と開くことは無かった
「ありがとう、ごめんね」
私は注目されるのが好きだ
でも注目されたことは今まで一度もなかった
勉強でも平均以下
運動でも平均以下
何も取り柄のない私に
どうしたらみんなが注目してくれるのか
足りない頭をフル回転させた甲斐があった
これが私の望んでいた景色
私が世界の大スターにでもなったような気分
今日が今までで1番良い日
もしかしたらテレビにも出ちゃうかも?
逆さまに落ちていく私を見て
みんながスマホを取りだす
『逆さま』