噂というのはすぐに広まって
不幸話、恋愛話、全部全部話の種になる
「ねえ、あの子A君と付き合ったんだって」
「あの子、先生に呼び出されたんだって」
他人の話をしてなにが面白いんだろう
それを話したところでメリットはなんにもないのに
「え、好きな人いるの!?誰!?」
「誰にも言わないからさ、教えて!」
「約束!!」
どうせ私もみんなのネタにされるだけだけど
関わりを途絶えさせたくないからって嘘を吐く
「わかった、約束だよ。」
みんな"約束"なんて最初から守ってるつもりはない
そんなものただの口先だけでの言葉と変わらないから
「え〜〇〇君なんだ〜秘密にしとくね!」
明日には、広まってるんだろうなぁ。
傘の中の秘密
それは誤差のような雨
傘はささなくてもいいかな、なんて思ってたら
隣の君は女子力高めだね、傘なんか持ち歩いて
「一緒にはいる?」
え、いいんですか、相合傘しちゃって
ちょっと頬を赤らめるからそれは初めてなんだろう
「いいの?ありがとう」
ごめんね、一歩リードしちゃった。
傘の下には二人の後ろ姿
たまに傘が揺れて笑いあう声が聞こえる
何を話しているだろう、どんな顔をしているだろう
それは僕達だけの秘密
やっぱり変だ
君がいると鼓動がおかしいくらいに鳴って
君と話すと自然と安心感が生まれて
どうしましょう?相手は同性の友達です
しかもその子には大切な親友がいるんだって
勝ち目なんてひとつもないのに
もしかしたら、なんて思ってる自分がいる
君のインスタには親友とのストーリーがあがって
諦めかけていたのに君からのDMだなんて
卑怯です、この想いを捨てきれません
好きになって嫉妬してまた好きになる
ねぇ、私こんなにも君のことが好きなんです
なのにどうして
どうして君は私の好意に気づいてくれない?
私が今まで君にしてきたことが
全部空に溶けて消えていく
どうせ覚えていないんでしょ?
私の事なんて眼中にもないんでしょ?
いっそのこと君を嫌いになろうとしたのに
どう頑張っても
嫌いになることができないんです…
まって、置いていかないで
いや本当は行きたくないんだけれど
まって、私の名前は呼んでくれないの?
いや呼んでくれても別に嬉しくないんだけど
まって、私を空気にしないで
そんなに私が必要ないの?
衝動的に飛び出してやってきた場所は
見ず知らずの街
顔も名前も知らない人々
お金くらいは持ってくればよかったかな
帰り道も分からない
声をかけてくれる人もいない
でもそんなの苦じゃなかった
誰も干渉してくれない
見向きもしてくれない
それがただただ心地よかった
私を一人にしてくれた
今までとは違う新鮮な空気
酸素ってこんなに美味しかったっけ
ゆっくり目を瞑る
もうちょっとだけここにいさせて
あと少しだけ
あとちょっとでいいから
もうあんな地獄には戻りたくないから