黄色く点るあなたからのメッセージに気づいて、
赤になることは無いとわかったけど、
いつまで経っても青にもならないのね
「独りになるのが怖いんだ」
「誰かと深く関わることも怖いんだ」
それだけを知らせたかったのね
#84「信号」
つまらない男でごめん
甲斐性がなくてごめん
懐は浅いし
思慮も足りないし
共感性も乏しい
キミがオレに向けて話す言葉は
全て「めんどくさい」で片付けた
面倒なことはいつも
キミに擦り付けて
それでも責めないキミに
余計に腹が立つ
だから
最後の最後もキミのせいにした
あの時
キミのあの表情(かお)を見たら
やりきれなくなった
そうか
初めからキミの中に
オレは存在してなかったんだ
医師がキミに告げた
「何とも言えませんが、経過によっては突然死の可能性はあります」
それを聞いたキミの表情(かお)は
驚きでも
恐怖でも
憂いでも
諦めでも
無く
安堵だった
賢いキミならわかるだろう
この言葉の意味を
愛してもいない男と
この先の人生を無駄にするなら
一層のこと
「消えてくれ」
#83言い出せなかった「」
魔法使いが
王子様に会うために
人魚の私に足を与えてくれた
地上に着いて
私は泣いた
慣れない足で歩くことは
想像以上に辛くて
「こんなんじゃ、ドレスに合う靴では踊れやしない」
うずくまって泣いていると
一人の男の声がする
「足が痛いんですね」
「さあ、私の肩につかまってください」
「ゆっくりでいいですからね」
「大丈夫」
コクコクと涙で言葉にならず頷く
男の言うように
肩につかまり立ち上がると
男は私の身体を掬うように
抱き上げて、そのまま
男の住まいに私を置いた
こじんまりとした男の部屋で
少しずつ歩くことを覚えた
夜は男が私の足を優しく摩ってくれる
あんなにも痛くて
歩くことすら困難だった足は
男が用意してくれたスニーカーで
近くのスーパーに買い物に行けるようになった
男は朝起きて出かけると
夕方までは帰ってこない
手先が器用な私は
男のために料理をし、洗濯をし、
掃除もできるようになった
このところ
男を朝に見送り、男が帰ってくるのが
楽しみになっている
「私、王子様と踊る必要はなかったのね」
スニーカーを撫でながら
男の帰りを待ち侘びた
#82「Secret Love」
どれだけ教科書のページをめっくても
私の人生に起こったことは
書かれていないことだった
誰も教えてくれなかった
「助けて」
ノートに書くだけじゃダメだということ
言葉にして
一番言いにくいことを叫んだら
私の新章が始まった
#81「ページをめくる」
汗だくで上った
あの急な階段も
人工芝で並んで
寝転がったことも
下北沢の古着屋さんで
売ってた変なTシャツも
夜更かしして見た
B級ホラー映画も
間違えて大量注文した素麺を
食べ続けることになった日々も
忘れ物にしようと思ってたけど
全部、探し出して拾い集めて
上書きするから、安心してね
私、あなたのことだけは
忘れるわ
#80「夏の忘れ物を探しに」