見えずとも行くべき道を行くあなたの心こそ羅針盤
羅針盤
空白が支配している
君の香りさえ残っていない
脳内で君の笑顔だけが繰り返し上映されている
どうすれば立ち止まってくれる?
ただ去っていくその背を見つめて
君の秘密を共有できたような夢ばかり見ていた
知ったような口振りで何一つ教えてはくれない
わたしの本当を知っていたのは君だけだったのに
振り返ってわたしの涙を見てよ
わたしを見てよ
空白ばかりで思い出せるものなんて何一つ残ってない
ただ君の笑顔だけが繰り返し流れていく
雨の中も君がいなきゃ傘さえ差せない
ただ君へかける言葉が見つからないだけ
カメラロールに君はいない。
ただひとりの君へ
溺れてゆく暗闇のさらに奥深く
あたたかさとまっくらだけが包んでる
溺れ続けたらきっと悲しいなんて思わない
水圧で動けないよ
涙も溶けていくばかりで
泡と共に浮かんで消えるこの海ぜんぶ透明な涙
雨が降るまでは泣けないからただそばにいて
透明な涙
粘膜に焼き付いて消え去らない
頭蓋に染み付いて抜けきらない
鼻から吸ったら吐き出せない
多幸感が肺を満たしていく
呼ぶたびにクラクラ
見るたびにグラグラ
飲み干しても飲み干しても足らない
気がついたら縋ってしまうような
白昼夢みたいな
あなたのもとへ
それはまさしく毒
あなたのもとへ
そっと触れる硝子より儚いそれはなんだか生ぬるくて、気持ちの悪さに吐き気がする。脈打つ。波打つ。ぬらりとした粘液がわたしの手を伝って冷たい床に滴り落ちた。あたたかさが床に触れたことで蒸気でも発するのではないかと夢想する。未だそれは一定のリズムを奏でている。その脈拍で踊れたらどんなに心地良いだろう。純粋なあなただけで構成されたリズムに体を揺らしてみたかった。訳もなく。それは脈打っている。波打っている。一定のリズムで、徐々に、そっと、空気を振動させながら少しずつ冷たくなっていく。あなたと踊ってみたかった。あなたの音で。
さよならの音抜けを繰り返すここは悪夢
そっと