溶け切った蝋のような、
泥と混ざりはじめた雪のような、
剥がれかけた皮膚のような。
終わりばかり見えている道の向こうに行く。
そして触れ合う指先の僅かな熱さえ奪うほど確実に、物理的にあなたとの繋がりを感じていたい。ただ言葉を交わすだけの許しを願いたい。あなたの足に縋りついて愛を乞いたい。ひそやかな想いを焚いて燃え滓のからだでずっと欲してる。
しんしんと降り積もる真白の心まるで冷たい燃え滓みたい
ひそやかな想い
ただ風に揺られる小さな命が。
星が光ったのではなく笑っていた。
花が咲いていたのではなく笑っていた。
枯れ地に何が残るだろう、あなたに何を伝えられるだろう。
じりじりと焦げてゆく端からあなたの足元まで
見え透いた終わりに気づかないふりをして
あなたに伝えられる言葉が見つからなくて、
消えてゆく世界の寿命を背にただあなたが風に揺れている。
いつか芽吹くあなたに私は何を贈れるだろう。
風に舞っていくあなたに私は何を渡せるだろう。
燃える大地であなたがあまりにも綺麗に咲いたから
いつかのありもしないような世界を夢見てしまうのだ。
花のようなあなたに垣間見た未来の記憶へ水をやる
姪が産まれてから、未来について考えることが増えました。なんだかいつでも死に向かっているような心地だったのに。誰かのために想うことって素敵なことです。未来の記憶が溢れて仕方ない。芽吹いた全ての花が枯れることなく美しい水と光で満ちますように。
未来の記憶
心とは存在しない。
感情なんてものはただの脳の電気信号で、科学で簡単に変わってしまえるものだ。けれど、そんな目に見えない儚いそれがいっとう愛おしい。ふらふらと彷徨うその感情に揺れ動かされている。ココロのない人生なんてあるだろうか。形だけが全てなら機械や人形と何が違うだろう。ココロとはすなわち私たち自身だ。目に見えないそれが私を私にする。
あなた自身を愛せないなら誰も愛せないのよ
ココロ
雪が降ると音なんてなんにも聞こえない。
昨日なのか今日なのか、明日なのかわからないような真っ白の中で少しずつ青色が滲んでくる。そうすると、ああきちんと時間が過ぎているのだと安心する。
そうして徐々に明らんでくる空の、曇りのない青を見ていると、なんだか、空に放り出されたような気分になる。白と青だけが視界を支配していて、熱いのか冷たいのかわからないほど凍った風のなか、わたしはすこしだけ鳥になる。
そしておはようと囀りたくなる朝の小鳥の気持ちを理解するのだ。小鳥の視点で見た世界の、なんと美しいことだろう。日々を彩るたった少しの風や音でさえ特別に感じられる。冷たい掌を氷のような耳に当てて少しずつ脈打つ鼓動を聞いて、手を離す。もうじき目が眩むような白がやってくる。それまではもうすこしだけ、夢と現実の境目のような、灰色の静かな夜明けを鳥たちと共有していよう。
廻っているのが自分か世界か、走れば昨日に追いつくの
静かな夜明け
本数で伝わる想いより、あなたの血肉で赤く咲く花に魅せられたい。言葉なんかじゃちっとも信じられない私の不安を掻き消したいのならやっぱり花を生けて頂戴。いつか枯れる花より戻らない栄光で着飾って、不快なほど薫って、粘着性の愛を滴らせて、私にだけ咲くその花を摘みたい。あなたの日々を摘み取って少しずつ増えてゆく花を愛したい。共有したすべての時間が花びらを散らすその光景を眺めていたい。酷いって思われても私は落ちてゆくあなたの花弁ひとつひとつが一等美しく見えるのよ。単調な言葉では足らないの、私の春。冬の赤薔薇。散る前に枯れて仕舞えば私が最期の愛しい人かしら、ねえわたしだけの永遠の花束。
永遠にしたいのなら瞬間を捨て去って。
永遠の花束