そっと触れる硝子より儚いそれはなんだか生ぬるくて、気持ちの悪さに吐き気がする。脈打つ。波打つ。ぬらりとした粘液がわたしの手を伝って冷たい床に滴り落ちた。あたたかさが床に触れたことで蒸気でも発するのではないかと夢想する。未だそれは一定のリズムを奏でている。その脈拍で踊れたらどんなに心地良いだろう。純粋なあなただけで構成されたリズムに体を揺らしてみたかった。訳もなく。それは脈打っている。波打っている。一定のリズムで、徐々に、そっと、空気を振動させながら少しずつ冷たくなっていく。あなたと踊ってみたかった。あなたの音で。
さよならの音抜けを繰り返すここは悪夢
そっと
忘れられたならそれでいいよ
無くしたものも思い出せないなら
初めから無いのと同じじゃないか
水の中じゃ上手く生きられない
こんなんじゃ涙すら滲んでゆく
忘れてしまいたいよ
踏み出す一歩がいたくて
声も枯れ果てて
本物にはなれないの
あなたとわたしになんの違いがあるだろう
皮を剥いだらきっとおんなじ
水を得る前に泡と消えてく魚と同じ
忘れたくないよ
何を差し出したっていいから
あの夢のつづきを生きてみたいの
反芻するその温もりが、瞬きが、何度でも焦がすから。
二度と手に入らないとわかっているなら誰もが大切にするはずなのに、漠然とただ日々を生きて、確証もないのに明日が来ると信じて止まない。おやすみの後のおはようを、またねの先を夢見ていたい。置いていきたくないなら、忘れたくないならきっと息をするべきでは無いんだろうけど。
あの夢のつづきを
同じ煌めきから生まれたの
遠い空を駆ける宇宙の塵に
祈るだけじゃ物足りないわ
もしも生まれ変われるなら
また同じ宙から君に落ちる
誰より早く流る星のかけら
零れ落ちた宇宙の子どもわたしたち金平糖みたいね
惑星がぶつかって生まれたいのちが私たちなら、私たちは皆同じ星の子どもといえるのではないでしょうか。醜く惰性的な消費ばかりで自己嫌悪していても、星のかけらだと思えばなんだか自分を好きになれそうなんです。
星のかけら
追い風がなんだって言うんだ
ただの風に一喜一憂してまるでパブロフの犬じゃないか
涎垂らして幸福を待ってちゃ仕方ないし
けれど踏み出した一歩目が間違いの方が多いし
明日が必ず来るなんて確証がないから怖いよ
生きるのは恐ろしいよ
目的地が死ならみんな追い風だよ、はは
ねえ全部が私のせいみたいだ何もかもが不幸みたい
不幸が流れ続けるニュースと死んだ人の名前が載る新聞
毎日が世界の崩壊の音で溢れてる
悪い時が悪かったのか良かった時が良かったのか
惰性で抽出していく命の残り滓だ
主観で縊死する水溜りみたいに消えていく
泥みたいに生きてなんの価値がある
誰にも責任を渡したくないだけだよ
悲しみも憎しみも喜びも死も何もかも私のもの
追い風がなんだって言うんだ
命が落ちた時、始まったのか終わったのか知ってるのか?
いずれにせよただ時が過ぎるだけ
風薫るゆらゆら酩酊のさなか幸福に満ち満ちて。
追い風
変わらないものはないから
あなたといる時間がいっとう愛おしくて。
変わらないものはない