あなたがすき

Open App
11/27/2024, 10:59:29 AM

愛を知った人間は獣に堕ちてしまう
二足歩行の猿から知性を身につけヒトへと変わる
その途中で愛情を知る
愛することは人を縛り付けるということで
また自分を縛り付けるということでもある
目に見えない
手に入らない
けれど愛は結局わたしたちの中心にいて
それがなければ生きていけないように思える
わたしたちの日々の最終地点には愛がいて
初めには愛がなければ生まれない
知ってしまったら二度と戻れない
失う恐怖に怯えなければならない
飽和した愛では満足出来ない
愛は人を獣に堕とす
それでも人がそれを求めてしまうのは
初めからただの獣でしかなかったからか

咲いて枯れて巡って生まれるそれは本能

愛情

11/26/2024, 11:14:07 AM

私が君のために英明であろうとした時間は君の人生を占領するには少なすぎて、自分の愛だとか君への侵略だとか、結局のところ、私は愚かでしかなかったのだ。
美しさは人を救うだろうか?
写真の中にいる彼女は私が覚えているよりも幾分か若く、そして引き攣った笑みを浮かべていた。隣にはおそらく祖父だと思われる若い男が同じように口の端を力ませて立っているものだから、なんだか可笑しくて鼻で笑う。きっとこれは彼女の成人式だろう。他の写真は家族全員で撮ったものもあった。あの女にもまさかこんなにも純粋な時期があっただなんて笑えてしょうがなかった。そうだ。彼女も、私も、果てはその他でさえ実際ただの人間でしかなかったのだ。何を恐れていたんだろう。あの時の私にもし会えるなら、この写真を見せてやりたかった。一皮剥けばおなじ肉塊だと。
彼女が私のものでは無い時、私も私のものではなかった。たとえ偽りでもよかった。私はただ一言、嘘でも愛してると彼女に言って欲しかった。でも彼女はある時私に告げた。「君のそばにいると楽だ」と。楽なだけだ。彼女は私を愛してはいない。同じ方向を向いていないことがこんなにも辛いとは思わなかった。この写真の一枚にでも共に写れたらどんなに嬉しいことか。
美しさは羨まれはすれども決して味方にはなってくれない。
いつか翳る光なら手が届くのだろうか。
永遠のあなたを夢の中でさえ焼き付けていたい。
燃え上がるように愛させてなどくれなかったから、あなたへの感情が私の体躯へ染み込んでしまった。
微熱に侵されている。
愛に。

虹蔵不見ともひとつだけ確かな色を捉る

微熱

11/25/2024, 10:43:59 AM

曇った緑色の光が部屋中を照らしている。夏だからか小バエが飛んでいて、閉め切った部屋の中でどうにも蒸し暑い。まるで生きたまま火葬されてるみたい、なんて不謹慎なことを思いつつ鈍く光る器具を机に並べていく。少し錆び付いていて、慌てて刃を交換するために新しい器具たちを消毒する時間を要した。まだ、午前2時だった。
金髪の映える真珠の様な肌の女。瞳の色は見えない。ゆっくりと上下する胸だけが彼女が人形ではない証拠だった。
青ざめた薄い肌の上を小さな刃で軽く撫でると遅れてプツリと血が滲む。ミルフィーユのように重なる玉の肌、薄らとこびり付く黄色い脂肪、引き締まった腹筋。傷の両側を鑷子で挟んでゆっくり開く。すると存外美しい内側が見えた。赤黒く、てらてらと光の反射する繊細な蜘蛛の巣のような、または古びた上等なレースのような膜の下、生々しい香りを放つ腸や丸い臓器達がいる。慎重に膜を切ると獣臭い匂いが部屋中に充満した。こんなに美しい女でも、やはり切り開いてみれば案外動物だと実感できる。サイズのピッタリな手袋をつけた手を腸の隙間に差し入れる。ぐちゅりと音がして、生暖かい液体の感覚をゴム手袋越しに感じて顔を顰めた。何度やったって気持ちの悪い感触だ。生を感じた。太陽の下に手を翳さなくったって誰かの体温を感じた。
じわじわと冷房が効いて来たのか、気がついたら少し肌寒くなってきた。手に触れる粘液だけが温かだ。体の中をほじくり返して目的の臓器を掴む。ゆっくりと引き抜いて、鉗子で掴むとそのまま体の上に置いた。内側に仕舞われているものが肌の上に置かれている倒錯的な光景に脳がクラクラしそうだ。乾かないうちに急いで血管なんかを糸で結んだ。未だ興奮の最中震える手で。足元のペダルを踏んだ。焦げた匂い。パチパチと弾ける音。煙。死んでゆく細胞。分離した。
こんなにも簡単に切り離されてしまった。
切り離されたこれははたして彼女だろうか?
開けられている内側に液体を垂らす。初めから逆再生する様に一枚一枚丁寧に膜を戻して、結んでいく。閉じればまた人形と見紛うような美しさ。
蛾と蝶は何が違う?何も違わないだろう。なら人形と彼女も何が違うだろう。このまま喉の奥に差した管を止めてしまえば人形になるだろうか。なんて、馬鹿らしい。突然鳴り響くアラームに驚いてモニターを見れば少しだけ体温が下がったのか、台形が乱れていた。
生きている。彼女はたしかに生きていた。なぜだか涙が出そうだった。グロテスクな中身を持ちながら、美しい皮を被って生きている。それがすこし恐ろしい。
ねえ君は枯れた花をそういうものとして愛せるのに、完璧でいたいんだね。変わり続ける中身と裏腹に変わり映えのない彼女をわたしは愛し続けられるだろうか。それは同じ彼女と言えるだろうか。焼ける骨の匂い。鼻の粘膜にこびり付く甘い匂い。それは彼女の好む香水によく似ているような気がした。太陽の下で咲くあなたは以前と同じ笑顔を浮かべるのだろう。

蝶よ、花よ、あなたよ。


外側は何にも変わらないのに、じつは失った中身に記憶が宿っていて、少しずつ忘れていく何かや変わっていく何か。という妄想に囚われて恐怖しています。愛してるはずだったのに、ほんとうにそれが以前と同じなのかわからない。絶対そうだという確証もない。太陽に翳せば透けて見えるでしょうか。生きているという神秘。

太陽の下で

11/24/2024, 3:15:36 PM

忘れてしまうなら
はじめから無くてよかった
知ってしまうなら
いなきゃよかった
変わらないままがいいよ
綺麗なだけでいいよ
なんだか広くて
どこに行けばいいのか
ほんものの私はどれだろう
引っ張って探そうとしたら
解けて何も無くなった
取るに足らないことでほつれてゆく
編み込んだ幸せに縋り付いてる
廃退を繰り返して感情的になって
愛情ばかりでは生きていけなくて
馬鹿らしいと思うかな
きっと

ただ毛糸玉を転がしてもセーターにはなれないでしょう。


日々を編み込んできたからいま生きている。でもほんの些細なことで解れてしまう。なんにでも自分を当てはめて考えるのは安直すぎるとは思いますが、客観で生きていられるなら何度だって書きます。主観では傷つけてしまうばかりで。もっと小さなものに目を向けて、もっと単純なことに美しさを見つけたいなと思ってます。

セーター

11/23/2024, 12:04:54 PM

落ちてゆくのか
昇ってゆくのか
わからない
正しさを知ってるあなたは
不正解を押し付けている
落ちてるのではなく昇っている
死ぬために生まれている
眩しさが救いだとは限らない
落ちてゆく私の木の葉は舞うかしら
誰かの命へ巡るかしら
真っ暗な場所へどうか
おしまいにして

温もりに突如として侵略する冷たさに身を震わせて、
その時初めて産湯に浸かっていることに気がつく。


fallは木の葉が落ちることから名付けられ、秋の日はつるべ落としと言われるように、秋は何かと落ちることに焦点が当たっています。でもどの時間が正解かなんてわからないのに落ちるというのは面白いですね。日が長い方が異常で、木の葉もついていない状態が正常なのかもしれないのに。落ちているのではなくあるべき場所に帰っている。
むしろ生まれる方が異常なのでは。

落ちてゆく

Next