あなたがすき

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私が君のために英明であろうとした時間は君の人生を占領するには少なすぎて、自分の愛だとか君への侵略だとか、結局のところ、私は愚かでしかなかったのだ。
美しさは人を救うだろうか?
写真の中にいる彼女は私が覚えているよりも幾分か若く、そして引き攣った笑みを浮かべていた。隣にはおそらく祖父だと思われる若い男が同じように口の端を力ませて立っているものだから、なんだか可笑しくて鼻で笑う。きっとこれは彼女の成人式だろう。他の写真は家族全員で撮ったものもあった。あの女にもまさかこんなにも純粋な時期があっただなんて笑えてしょうがなかった。そうだ。彼女も、私も、果てはその他でさえ実際ただの人間でしかなかったのだ。何を恐れていたんだろう。あの時の私にもし会えるなら、この写真を見せてやりたかった。一皮剥けばおなじ肉塊だと。
彼女が私のものでは無い時、私も私のものではなかった。たとえ偽りでもよかった。私はただ一言、嘘でも愛してると彼女に言って欲しかった。でも彼女はある時私に告げた。「君のそばにいると楽だ」と。楽なだけだ。彼女は私を愛してはいない。同じ方向を向いていないことがこんなにも辛いとは思わなかった。この写真の一枚にでも共に写れたらどんなに嬉しいことか。
美しさは羨まれはすれども決して味方にはなってくれない。
いつか翳る光なら手が届くのだろうか。
永遠のあなたを夢の中でさえ焼き付けていたい。
燃え上がるように愛させてなどくれなかったから、あなたへの感情が私の体躯へ染み込んでしまった。
微熱に侵されている。
愛に。

虹蔵不見ともひとつだけ確かな色を捉る

微熱

11/26/2024, 11:14:07 AM