ボロボロの体に障らないように、ツヤツヤのかたい翅をそっと撫でる。
1年生活を共にした虫の寿命が尽きた頃、羽化不全で上手く体が作られなかった新しい命が、我が家には居た。
長くは生きられない様子を不憫に思い、日々世話をしてきたけれど、予想に反して食欲は旺盛であるし、ある時はゼリーの中に仰向けに埋まった状態でピクリとも動かず、
「もはやこれまでか…。」と諦めつつゼリーから救い出してやれば、何事も無かったかのように土へ潜って行った。
見た目の悲惨さとは裏腹に、生命力の強い子なのだ。
「ご飯食べなさいよー。」
今日も生存を確認し、声を掛ける。
次の夏まで一緒に居られますように。
ckoneの香りを嗅ぐと、世紀末の東京に時が戻る。
あの頃の退廃的な時代の空気や、諦めるしかない現実を、強がりながらも受け入れている高校生達の表情がまざまざと思い浮かぶ。
それなりに頑張るしかなかったんだよね。それで十分だよ。
大丈夫、1999年に世界は終わらないし、すぐ景気がいい時代も来るよ。好きな事を好きって言える時代もすぐそこだよ。
自分の為に生きていいんだよ。
あの頃、若者だった皆さんへ
馬鹿みたいに晴れた日に限って、何もかもに苛立ちを覚えて、心の中で悪態をつきまくる。
表情に気遣う気もさらさら起きず、恐らく凶悪な顔をしていたはずだ。
普段、善良なこの私が、こうも攻撃的な気分になる事に自分でも驚き、同時に人間とは怖いもんだな。と思う。
こういう時に他人とトラブルが起きて、全てのタイミングが悪いと事件になったりするんだろう。
心の空模様は大荒れでした。
夜の海は死の匂いがする。
だけど、静かな、密やかな、生の息遣いも聞こえてくる。
昼間の明るい時間には、眩しすぎてよく見えないけれど、夜になれば本当の姿を現す。
終わりと始まりが入り混じり、夜の海には波音が優しく響いている。
君の奏でる音楽は、せっかちな性格に似合わない優しい音がする。
でもよく考えてみると、機械や楽器を丁寧に扱う、その几帳面さが表れているようにも思う。
君の子供の奏でる音楽は、誠実な音がするね。不完全でも、決まりを守ろうと、正しい音楽が流れるようにと、頑張っているのがよくわかる。
いつか、その子の思う正しい音楽が奏でられたその先に、多彩な音色が聞こえてくるのだろう。
楽しみだね。