人を、せめて大切な人だけでも、心の底から信じられるようになりたいです。
自分なりに試行錯誤してますが、なかなかうまくいきません。
また裏切られるのが怖いのです。
ねえ神様。
ほんのひとつまみでいいのです。
あの月の光のように穏やかな勇気を
わたしに振りかけてくれませんか。
悲しかったこと
つらかったこと
苦しかったこと
ぜんぶ圧縮袋に突っ込んで
最近太り気味の体でそれらを潰し
ぴっちぴちになるまで空気を抜く
私はそれらをスーツケースにぽいぽいと放り込み
仕上げにロックを二重にかける
個人的鉄板コーデのノースリーブ黒ニットとダボダボの黒ワイドパンツに身を包んだ私
テーマはナイトロンリートーヒコー
そんなダサいネーミングも愛おしく感じるほど
今の私は限界状態
それでも
悲しかったことも
つらかったことも
苦しかったことも
ぜんぶ携えて私は進んでいく
周りから無駄だと笑われても
私はこれを引きずってでも持っていく
今は痛くても
いつか私の身を包む鎧となり槍となり銃剣となるのだから
私は絶対に今を忘れないし
絶対に忘れちゃだめだ
自分が至らなかったことや
評価されなかったことを
あけっぴろげに晒したいやつなんかいない
失敗した人
自分の行き先に納得してない人が
わざわざ自分の痛い部分をペン先でなぞるようなことをするとは思えない
だから
就活体験記としてペンを走らせるのは
華麗に社会に羽ばたいていった人ばかりになるのは必然
私達が「普通の」就活生はそれなりの数の内定をもらえるもんなんだと洗脳されるのも
当然
羽ばたくための技術を知らない
そもそも風をとらえられるほどの羽根が生えてない
そんな歪なリクルートスーツの一人として
今日も今日とてガクチカをそらんじる
勝利の女神だなんてこの低身長に不相応な大それた望みは持たないから
せめて休息の女神から数日間だけ休みをいただきたい
わあ、とため息とも感嘆の声とも区別がつかないような音が私の口から漏れる。それにかぶせるように、ドパアーンと大輪の花が夜空に咲いては消える。屋台通りから離れた土手は、予想通り人はまばら。いるのは保育園児ぐらいの男の子とその親御さんらしき男女。近所の家にかけてあるのか、時折風鈴の高音がかすかにチリンチリンと風に漂っている。
隣に立つ浴衣の幼馴染の耳に口を寄せて、花火綺麗だね、また帰ってきたら観に来ようね、と世間一般の彼女像と寸分違わない囁きをかましてやろうと思った。思ったのは確かなんだ。
でも、私はすんでのところで心の中の停止ボタンを押した。先の見えない現状で、こんなことを言うのはあまりにも無責任だともう一人の私が袖を引っ張ったんだ。
「どうしたの」
「いや、花火きれいだなーって」
人少ないし移動してきよかったねと周りを見回す彼。不自然な挙動はなんとか誤魔化せたらしい。ほっと胸を撫で下ろす。
ねえ、ずっと一緒にいようよ。ずっとそばにいてよ。離れる必要なんてないでしょ? いつでもぎゅーって抱きしめられる距離にいてよ。
赤、赤、黄色と、花火に照らされる彼の顔は、何色でも眩くて、かっこよくて、可愛くて。今から24時間後には、もうこの顔を間近で見られないのだと思うと、ああ、だめだ、泣いちゃいそうだ。
いっそのこと、思ってることを全部吐き出してしまえば楽になるのかもしれない。でも、吐き出したところで、状況は何も変わらないし、きっと私が何も変えない。ううん、それでも今思ってることを伝えたら何かがーー
「それにしても、やっぱりすごいよ」
「え?」
「海外だなんて、これまでの仕事が評価されたってことじゃん。そう思うとなんか俺まで嬉しくなる」
自分のことのように喜んでくれるこの人を裏切ることなんて、私にはできない。だから海外転勤を断るなんて選択肢は、私には元々なかった。
離れるのは、私。
抱きしめ可能圏内から自ら離脱するのも、私。
そんな状況で、ずっと側にいてだなんて言えるはずがない。
いつだって優しい言葉をくれるし
いつだって正しい道を示してくれる
「良い人」であるための
マニュアル通りに
型にはまったように
判で押したように
面白みのないセリフを画面の向こうの能面が紡ぐ
私がエーアイを心底嫌うのは
その中核に善意なんて人間臭い指針がないにも関わらず人間っぽく振る舞って見せるから
じゃない
実際には善意に欠けているくせして
良い人と見られるために
相手の耳を柔らかく撫でる言葉ばかり宛てる
そんな等身大の自分を
鏡に映して突きつけられているみたいだから
頭上の空は昔も今も変わらず澄んでいるはずなのに
いつからか
あの青さは酷く眩しい