NoName,

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6/24/2024, 3:57:47 AM

子供の頃はあまり思い出したくない。
今思えば、父親に躾という名の体罰をよくうけていたせいか、自分以外の人間の顔色をうかがってばかりだった。
殴られないよう人を怒らせないようにすることが最善だと思っていた。
小学校に入ると、クラスメイトの嫌がらせの標的となったけど、僕はいつもニコニコしてやり過ごし、1人になると泣いた。

あの日の帰り道もそうだった。
一部始終を見ていたクラスメイトの女の子が、嫌なことは嫌だと自分の意思表示をしなくては、他の人に通じない、というようなことを僕に言った。
「でも殴られるし。痛いの嫌だ。」
僕がそう言うと、彼女は「大丈夫だから」と言った。

何が大丈夫かはわからなかったが、何故か彼女の言うことを信じてもいい気がした。
すぐに意思表示できたわけではなかったけれど、彼女がこちらを時々みていることに気がついた。
その視線に背中を押されるように、少しずつ「嫌だ」
と言えるようになり、しばらくすると嫌がらせはおさまった。
後できけば、僕がいつもニコニコしているから、嫌がっているとは誰ひとり、教師さえも露ほども思っていなかったらしい。

子供の頃の僕に言うなら、
お礼を言うまえに転校していった彼女と数年後再会する。抱いた感謝と好意を大切にしまっておけよと。


お題「子供の頃は」

6/22/2024, 11:14:01 PM

昨日までとほぼ同じことの繰り返しの毎日。
朝目覚まし時計にたたき起こされ登校し、つまらない授業を聞き流し、塾へ行って帰宅する。

繰り返しの毎日のはずだったのに。
今朝ときたら目覚ましより早く起き、授業がつまらないのは変わらないけど、窓の外の青空を見ながら、昨日の君の柔らかい唇の感触を思い出してニヤけてしまう。
塾の前に1人で食べるコンビニ弁当すら激しくうまく感じるなんて、頭がおかしくなったかな?

告白して、君がうなずいてくれた時は嬉しかったけど不安もあった。君は僕を受け入れただけで、僕の君への思いと同じくらい、僕のことを好きになってくれるのだろうか?僕の好きが一方通行のままだったら。

でもまさか、君から唇を寄せてくるなんて。君も僕を好きになってくれたんだって、やっと思えた。
すべてが光輝いて見えるなんて、青春小説の中だけのことだと思っていた。モブの僕になんて絶対に起こりえないって。

だけど君が僕の日常をこんなにも素晴らしいものに変えてくれた。


お題「日常」

6/22/2024, 3:27:06 AM

何もかも光すらも飲み込むブラックホールのような、そして果てしなく静寂をもたらす深い漆黒の闇


お題「好きな色」

6/20/2024, 9:24:01 PM

このアプリのことを、某SNSで書かれたあなた様。
ハートを貰ったこと、それがとても嬉しいという気持ちが、とてもよく伝わる文章でした。
それで私もどんなアプリか興味を持ちました。
この方がいなかったら、私はこのアプリと出会っていなかったかもしれません。
ありがとうございます。


お題「あなたがいたから」

6/19/2024, 12:12:56 PM

4限目の講義を聞き終え大教室を出たところで、「今日はもう帰るだけでしょ?僕も傘に入れてってくれない?」とヒカルが僕の腰に抱きついてきた。「人が見てるから」、と腕をほどきながら僕は彼に「自分の傘は?」ときいた。
「貸した。」
「貸した?自分も必要なのに?」
聞けば、傘の骨が折れて困ってたやつに貸したらしい。傘はきっと返ってこない。
「デートに間に合わないって焦ってたからさ。」
彼は息をするように、当たり前に親切ができる。こういうところ、尊敬するし惚れたきっかけでもある。

「どれくらい待った?ラインとかメールとかしてくれれば。」と言う僕の言葉を遮るように「もー、好きな人のこと考えて待つ時間は、幸せ時間なんだよ。」と彼は少し拗ねて言った。その仕草も可愛くて見つめてしまう。
僕は何とか視線をそらし、「じゃ駅まで行こうか。」と言って、僕は彼と並んで歩き出した。
すると彼が「駅までじゃなくて、僕のアパートまで送って。お願い。」と言った。

歩みを止めないまま、僕は彼を見ずに言った。
「君ねぇ、迂闊過ぎない?その上無防備。この間のチューのこと忘れたの?あの時もヤリタイコトとか言って、僕を煽って。」
僕が立ち上まると、ヒカルも歩みを止めた。
「僕がこのまま君の誘いに乗ってアパートにまで行ったら、何もしないで帰ると思う?今度はチューだけじゃ止められないよ?僕は君をこんなにも求めてる。気付いてるでしょ?」

頬を赤く染めたヒカルは一瞬ひるんだけれど、すぐにきっぱりとこう言った。
「信じてる。」

信じてるって何を?
あぁだからうさぎちゃん、僕は隙あらば狙っているオオカミなんだよ。今日はレポートの〆切もない。この件に関しては信じられても困る。僕のオスの本能が理性に圧勝するに決まってる。

けれど。

「あー、まー、送ってくよ、ヒカル。」再び僕は歩き出した。
クソ、どこまで理性が保てるかなんて知ったことか。惚れた弱みだ。ガツガツしすぎだ。

2,3歩遅れて歩き出したヒカルが、ハッとして僕を見た。僕に追いつき抱きつくと「い、いまヒカルって呼んだ?名前呼んでくれたよね?嬉しくて死ねる…もう1回お願い。」
ふんっ、不意打ちをしてやった。僕の気持ち、伝わったか?でも。

「お願い何個するんだよ。僕のお願いはきいてくれないのに。」今度は僕が拗ねたふりをした。ヒカルは僕の持っていた傘を傾けると、電信柱と傘にかくれて僕にそっとキスをした。
2人に雨粒が落ちてくる。
「濡れちゃうね。」ってヒカルが言うから、僕は
「いろんな意味でいろんなところがね。」と答えた。
それにしても、可愛くてずるいな。

「好きだよヒカル。」

そう言って今度は僕からキスをした。
僕は今にも飛んでいきそうな理性を必死につなぎ止めていた。


お題「相合傘」

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