子供の頃はあまり思い出したくない。
今思えば、父親に躾という名の体罰をよくうけていたせいか、自分以外の人間の顔色をうかがってばかりだった。
殴られないよう人を怒らせないようにすることが最善だと思っていた。
小学校に入ると、クラスメイトの嫌がらせの標的となったけど、僕はいつもニコニコしてやり過ごし、1人になると泣いた。
あの日の帰り道もそうだった。
一部始終を見ていたクラスメイトの女の子が、嫌なことは嫌だと自分の意思表示をしなくては、他の人に通じない、というようなことを僕に言った。
「でも殴られるし。痛いの嫌だ。」
僕がそう言うと、彼女は「大丈夫だから」と言った。
何が大丈夫かはわからなかったが、何故か彼女の言うことを信じてもいい気がした。
すぐに意思表示できたわけではなかったけれど、彼女がこちらを時々みていることに気がついた。
その視線に背中を押されるように、少しずつ「嫌だ」
と言えるようになり、しばらくすると嫌がらせはおさまった。
後できけば、僕がいつもニコニコしているから、嫌がっているとは誰ひとり、教師さえも露ほども思っていなかったらしい。
子供の頃の僕に言うなら、
お礼を言うまえに転校していった彼女と数年後再会する。抱いた感謝と好意を大切にしまっておけよと。
お題「子供の頃は」
6/24/2024, 3:57:47 AM