その池でプカプカと泳ぐ白鳥は、身体にハートの紋様があることから、恋愛成就のご利益があると言われて大人気。
え、あれ?
今日のお題モンシロチョウ?
あ、あはは。しまった。
紋白蝶(もんはくちょう)なんて読んじゃったよ。
赦して頂戴な。蝶だけに。
「私のこと、忘れないでね」
その言葉を最後に、ある一人の魔法少女の身体は光の粒子となって空気に溶けた。
「お墓参りには行かなくていいの?」
それから丁度一年が経った日―――悪の組織によって命を奪われた彼女の一周忌に、悪の幹部とドンパチやった帰り道で、相棒の妖精は言った。
妖精の言葉に、魔法少女は頭をぽりぽり掻きながら、面倒臭そうな表情を隠さずに答えた。
「え? あー・・・そんなのもあったっけ・・・? でも今日は疲れたしなぁ、いーや」
魔法少女はステッキで妖精を小突き、「ほら帰るよ」と言って帰路を進んで行く。そんな彼女の後ろ姿に、妖精は不思議そうに首を傾げながら彼女の背を追った。
「人間って不思議だなぁ。あんなにも忘れないって言った言葉そのものも忘れちゃうんだもんね」
横たわる魔法少女の側に、ソッと近寄る少女は、彼女の手を握り締めて言った。
「絶対忘れないよ、いつまでも」
一年後に、自分は一体どんな姿になっているだろうかと、ぼんやり考えてみた。
どこで、誰と、なにをしているのか。
一年後…、小学校の頃に、将来の夢を書けと言われた時ほどは、想像することが難解とは思わないが、それでも、一年後自分がなにをしているか想像しろと言われれば、咄嗟には考え付かないほどのものではあった。
それは自分に、『将来の夢』と呼ばれるようなものがないことが、一番の要因なのだろう。
学校の先生になりたい。そんな夢がもし自分にあったのだとしたら、一年後は大学の教育学部へ行っていると、実に明快に答えられただろう。
しかしない。自分には、将来の夢も、なりたい未来もない。
…強いて述べるのだとすれば。
今この瞬間のように、文章を書いていられたらいいなと、そう願うだけだ。