「私のこと、忘れないでね」
その言葉を最後に、ある一人の魔法少女の身体は光の粒子となって空気に溶けた。
「お墓参りには行かなくていいの?」
それから丁度一年が経った日―――悪の組織によって命を奪われた彼女の一周忌に、悪の幹部とドンパチやった帰り道で、相棒の妖精は言った。
妖精の言葉に、魔法少女は頭をぽりぽり掻きながら、面倒臭そうな表情を隠さずに答えた。
「え? あー・・・そんなのもあったっけ・・・? でも今日は疲れたしなぁ、いーや」
魔法少女はステッキで妖精を小突き、「ほら帰るよ」と言って帰路を進んで行く。そんな彼女の後ろ姿に、妖精は不思議そうに首を傾げながら彼女の背を追った。
「人間って不思議だなぁ。あんなにも忘れないって言った言葉そのものも忘れちゃうんだもんね」
横たわる魔法少女の側に、ソッと近寄る少女は、彼女の手を握り締めて言った。
「絶対忘れないよ、いつまでも」
5/9/2024, 4:07:59 PM