とこよ

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12/7/2024, 3:07:15 PM

なぜ、そんなところで座り込んでいるの。
こんなに寒いなか、暖房もつけないで。
風邪をひいてしまうよ。

やっぱり。

今日も泣いているんだね。
きみは何も悪いことをしていないのに。
毎日、何も、していないのに。
この部屋で泣く以外のこと。

きみの笑顔はいつから見ていないんだっけ。
見ていない期間が長すぎて、忘れてしまいそうだ。
それは嘘だけどね。
忘れられないから、いつまでもこんな、
湿っぽい部屋の片隅で、きみのことを眺めている。

また、笑った顔が、みたいんだ。
見られたら、成仏できる気がする。なんてね。
成仏なんて、一度もしたことがないから、
分からないけれど。

このまま、彼女の守護霊になれたりしないかな。
そうしたら、
彼女に温もりを与えられたりはしないか。
安心感として、存在できたりはしないか。

あはは。
死んでいるくせに、欲をだして、間抜けなことだ。
やっぱり、大人しく、幽霊として見守るとしよう。
届かなくても、励ましてみたりしよう。
きっとそれも、僕の穏やかで、幸せな日々になる。

ま、ちょっとくらいわがままを言っても、
聞こえないだろうけどね。
ほら、ちょっと笑ってみせてよ。
ね。

/部屋の片隅で

11/14/2024, 9:43:09 AM

とても真面目な人だった。
制服は着崩さないし、消しかすはちゃんと集めて、ごみ箱に捨てにいく。それから、落とし物を見つけたら、必ず持ち主を探していたし、掲示物が風ではがれる度に、拾って、また丁寧に画鋲を刺していた。誰が見ていなくても、そんな、素敵な人だった。学級日誌を読み返すのが好きだったことも知っている。ページをめくりながら、書いたクラスメイトのことを考えるのが楽しかったらしい。
彼は、もうすぐこの学校を卒業する。教師になるという夢に向かって、地元を発ち、進学するらしい。私は彼と話したことはないけれど、彼のことが好きだった。話したことがないどころか、彼は私のことを見たこともないし、存在も知らないだろうけれど。でも、確かに、彼を思っていたのだ。夜の暗いうちから、朝いちばんに登校してくる彼のあくびを、心待ちにしていた。教室が心霊番組の話題で持ちきりになったときは、彼の青い顔をみて、誰も、彼も、私のことが見えていなくてよかったと思った。あの一日は、ひどく落ち込んだけれど。それくらい、彼のことを考えていた。
卒業したら、もう彼とは会えなくなると思っていたけれど。この間の面談で、教師になって、この学校に戻ってこれたら、なんて言っているのを聞いた。私の体に温度はないけれど、かっと胸が熱くなるような感覚がした。私の気持ちが、きっと伝わったんだと思った。だから、運命の再会なんて言葉を信じて、あの日から毎日、彼の耳に囁いている。その言葉を忘れないように。


/また会いましょう