酸素、酸素、それを求める体がほしい。
いつからかなくても良くなって、いらなくても苦しくなくて、息を止めるとか分からなくなった。人じゃないみたいですごくいやだ。酸素を取り込んで呼吸をしたい。体がほしい。苦しくなりたい 生きて、いきたい、
なぜ、そんなところで座り込んでいるの。
こんなに寒いなか、暖房もつけないで。
風邪をひいてしまうよ。
やっぱり。
今日も泣いているんだね。
きみは何も悪いことをしていないのに。
毎日、何も、していないのに。
この部屋で泣く以外のこと。
きみの笑顔はいつから見ていないんだっけ。
見ていない期間が長すぎて、忘れてしまいそうだ。
それは嘘だけどね。
忘れられないから、いつまでもこんな、
湿っぽい部屋の片隅で、きみのことを眺めている。
また、笑った顔が、みたいんだ。
見られたら、成仏できる気がする。なんてね。
成仏なんて、一度もしたことがないから、
分からないけれど。
このまま、彼女の守護霊になれたりしないかな。
そうしたら、
彼女に温もりを与えられたりはしないか。
安心感として、存在できたりはしないか。
あはは。
死んでいるくせに、欲をだして、間抜けなことだ。
やっぱり、大人しく、幽霊として見守るとしよう。
届かなくても、励ましてみたりしよう。
きっとそれも、僕の穏やかで、幸せな日々になる。
ま、ちょっとくらいわがままを言っても、
聞こえないだろうけどね。
ほら、ちょっと笑ってみせてよ。
ね。
/部屋の片隅で
とても真面目な人だった。
制服は着崩さないし、消しかすはちゃんと集めて、ごみ箱に捨てにいく。それから、落とし物を見つけたら、必ず持ち主を探していたし、掲示物が風ではがれる度に、拾って、また丁寧に画鋲を刺していた。誰が見ていなくても、そんな、素敵な人だった。学級日誌を読み返すのが好きだったことも知っている。ページをめくりながら、書いたクラスメイトのことを考えるのが楽しかったらしい。
彼は、もうすぐこの学校を卒業する。教師になるという夢に向かって、地元を発ち、進学するらしい。私は彼と話したことはないけれど、彼のことが好きだった。話したことがないどころか、彼は私のことを見たこともないし、存在も知らないだろうけれど。でも、確かに、彼を思っていたのだ。夜の暗いうちから、朝いちばんに登校してくる彼のあくびを、心待ちにしていた。教室が心霊番組の話題で持ちきりになったときは、彼の青い顔をみて、誰も、彼も、私のことが見えていなくてよかったと思った。あの一日は、ひどく落ち込んだけれど。それくらい、彼のことを考えていた。
卒業したら、もう彼とは会えなくなると思っていたけれど。この間の面談で、教師になって、この学校に戻ってこれたら、なんて言っているのを聞いた。私の体に温度はないけれど、かっと胸が熱くなるような感覚がした。私の気持ちが、きっと伝わったんだと思った。だから、運命の再会なんて言葉を信じて、あの日から毎日、彼の耳に囁いている。その言葉を忘れないように。
/また会いましょう