オツワイ

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12/1/2025, 7:20:12 AM

【君と紡ぐ物語】
連続/託す/来世/後世/交換日記

 整理をしていると、棚から日記が出てきた。色んなキャラのシールが貼られた、ピンク色の表紙。整理の良さはこういうところにある。何気なく子供の無邪気さを懐かしむことができる。
 表紙には交換日記と書いてあるけれど、はて、誰と日記だったっけ。整理が後回しになることを承知の上で、読んでみることにした。

 4/1 おかあさんにこうかんにつきを買ってもらった。プりキュアがかわいい。
 実に子供っぽい文章だ。脈絡もないし、漢字も書けてない。それどころかカタカナまで。それでも、私の考えていたことが頭に流れ込んでくるみたいで、思わず次を読んでしまう。

 5/24 佐とうくんはさいきんどこに行ったの?
 5/27 すいぞっかん。たのしかった。

 5月のところで手が止まった。佐藤だ。まさか名前が出ると思ってなかったから驚いた。

 5/28 わたしも行きたかったなー。つぎはいっしょに行こうね!
 5/29 いいよ。せっかくだから安むらもよぶ?
 5/30 ん〜。そのほおがいい?
 5/31 みんないたほうがたのしいじゃん。

 そこまで読んで、日記で顔を覆った。でもなんか佐藤の匂いを嗅いでるみたいで恥ずかしい。日記の代わりに手で顔を覆ってみた。
 思い出した。そうだ、私は佐藤が好きでアピールしてたんだ。甘酸っぱい記憶だ。2人のデートに誘ったのに、佐藤って奴は他の女の子も誘おうとか言い出すんだから。とんだ好き者だ。ま、佐藤は何にも考えずに、ただいつものメンバーを誘おうとしただけなんだろうけど。

 そのまま読み直そうとして、はっと当たりを見渡した。外が橙に染まっている。
 やばい、ついハマってしまった。明日までに荷造りしないといけないのに……!
 右手の日記を段ボールに放り入れた。

 大切な記憶だ。大切な記憶だけれど、そう大事にする必要もない。だって、これからはわざわざ日記にしなくても、沢山思い出を作れるのだから。

 「だから、そのためにも荷造りを頑張らないとね……」

 山積みになった荷物を前に私は立ち竦むのだった。





 主人公は引っ越しのために荷物整理をしている途中。その時ふと目に止まった交換日記が気になり読んでいる。初恋の相手とのウブなやり取りを楽しんでいると、いつの間にか時間が過ぎていた。業者は明日来るため、急がなければならない。日記への未練もあったが、これからは直接思い出を作ろうと思い至る。主人公は日記を段ボールに放り入れて、佐藤との新婚生活の前に、荷物整理を強いられるのであった。

11/30/2025, 6:40:39 AM

【失われた響き】
声/反響/消失/失踪/暗闇/ホラー/一本道/怪異/読めない文字/心臓/ピアノ/楽器/動物


 ふと、喪失感を覚えることがある。デジャビュのような、それとは全く逆の現象__ジャメビュと呼ぶらしい__が度々起こる。
 間違いなく見たことある光景。学校に通っているのだから、通学路なんて見慣れている。あの時代遅れな駄菓子屋も、取り残されたような電柱も、きっちり12時をさして止まった公園の時計も。何もかもが、初めて見るように感じる。
 こう何回も同じような感覚を得ていると、本当に経験したことがないのではないか、とか。後付けの記憶なのではないか。とか。そんな変な考えばかりが浮かぶ。
 そんなのはただの錯覚だ。それをバカ真面目に信じるようじゃあ、今何をしているのか分からなくなる。迷信をそのまま信じるようじゃあ、義務教育の名が廃る。
 分かっているけれど。この感覚に嘘を付いても許されるんだろうか。
 誰かに相談するのも気恥ずかしいし、最近はこんなことを悶々と考えている。

__

 「よっ、南川。今日も浮かない顔だな」
 「いつものことだろ」
 思わずため息が出る。乱雑に組まされた肩を無理やり引っ剥がす。佐伯はいつもこんな調子だ。
 ありがたいことではある。いくら気が沈んでいても、明るく声をかけられると、悩んでいることさえ馬鹿馬鹿しくなる。
 それに、学校では唯一の友人だ。そういう意味でも、佐伯は異常者だ。クラスで浮いている俺に話しかけるなんて、普通じゃないからな。
 「そういや、今週コンサートだっけ?チケットまだ貰ってないけど、出るんだろ?」
 「来るつもりかよ」
 「そりゃあ行くだろ、なんてたって親友の大舞台だからな」
 佐伯は目玉を大きく開いた。そこまで驚くことかよ。行かないと言う選択肢を元から持っていないらしい。実際、佐伯にチケットを配ると絶対に来る。その後、LINEで必ず感想をくれる。律儀というか、堅苦しいというか。
 「そんな大舞台でもないし、わざわざ来なくたって良いよ。チケットも初めからないし」
 「そっか。ま、頑張れよ」
 そう言って、佐伯は強く背中を叩いて、彼女の元に走って行った。
 その後ろ姿に、ほんの少し羨ましいものを感じる。多分、唯一の理解者というものを人は無意識に求めるんだろう。そういう意味では、俺は。

 「俺は誰にも理解されないんだよな……?」
 当然の結論に、なぜか疑問が浮かぶ。
 俺には彼女はいない。こんな捻くれた奴を好きになってくれるような物好きはそういない。高校で1人いれば良い方だろう。そして、その枠を佐伯が埋めてしまったのだから、もう望みはない。

 だというのに、寂しさでもなく、喪失を覚えるのはなぜなのだろうか。
 のっぺりと続く廊下がやけに長く感じた。



 主人公(南川)には彼女がいます。いました。しかし存在が消えてしまいました。主人公は彼女と過ごした日常と、1人で過ごす日常の差を無意識に感じ、それがジャメビュとなり主人公を揺さぶります。主人公と彼女は同じ音楽教室に通っており、彼女の方が上手く、主人公は彼女を目標にしていました。ここから教室の描写、目標が消え、思うように手がつかない主人公。それを佐伯から指摘され、何かが足りないことを察するも思い出せない主人公を描くつもりでしたが、体力切れのため断念。

11/29/2025, 4:48:52 AM

【霜降る朝】
霜/冬/寒い/朝/日差し/雪解け/喪失/震え/死/記憶喪失/ベッド/外/手袋/別れ

便り/外出/意気揚々

外は白く染まっていた。いよいよ冬も本気を出してきたらしい。ほんの少し、対抗したくなった。俺の高なる気持ちと、冷たい冬の風、一体どっちが優勢なんだろう。
手で椀の形を作る。ひらりと落ちてくる霜を捕まえる。ほうと息を吐き出した。この息が俺の体温を決定づけている。今日は間違いなくいい日になるだろう。
「うー。寒い」
強い風が吹いた。身を震わせながら、駅に向かった。

11/26/2025, 1:57:57 AM

【落ち葉の道】
寿命・枯れ・悩み・淡い・寒い・秋・冬

寿命/秋/帰り道/悩み事/1人

もって半年の命らしい。ひらりと落ちる枯れ葉に何か淡いものを感じた。頭では理解していたが、いざその時が近づくと耐えられなかった。親が亡くなるなんて、絶対起こるのに予想していなかった。枯れ葉が割れてざくりと音を出した。僕はいま、立っている。

落ち葉を故人と捉え、それを踏み締めることを死を乗り越えたとして表現している。

11/24/2025, 2:43:11 PM

【君が隠した鍵】
記憶の鍵・扉の鍵・逃避・禁忌・部屋の鍵・優しさ・苦渋・羞恥・心の鍵

開けちゃダメだよ。君はそういってふわりと微笑んだ。ダメだ、と言われたら見たくなるのが常だ。君の目を盗んで中を覗いた。途中まで飲んだカプセルが入っていた。1年前に期限は切れている。
ああそっか、君はもういなかったんだっけ。

君が隠していたのは錠剤。君はもう亡くなっており、語り手は幻想を見ている。

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