星に願って、本当にその願いは叶うのだろうか。「星」というのはあくまで対象であって、別にほしでなくたって良いのではないか。
「星はずうっと空の上にあるでしょ。だから、星に願って、って言うんじゃない?」
俺の言葉に、彼女はそう言って微笑んだ。ずっとなんてない、昼には見えなくなる、と返せば「見えないだけだよと笑われた。
「太陽の光が強いだけ。星はずっとそこにあるんだよ。」
「……だからって、星に願うこともないだろ。願うなら、もっと……願いを叶えてくれそうなやつにしろよ。」
彼女はまた笑った。でも、きっと星じゃなきゃ。願いなんて叶えてくれないよ、と。
叶えてくれない。……違う、「叶えらえない」だ。
俺が何よりも叶えてやりたかったのに。俺は神様じゃないから。
だからせめて……叶えられなかった分、俺は彼女を思い出すことにしている。
星になって、永遠に空の上に存在している……願われる側になってしまった、病室で笑っていた彼女の姿を。
イヤリングの片方を、なくした。
落としてしまったのかもしれないし、家のなかにはあるけれど、どこか目につかない場所にいってしまったかもしれない。鞄や服のポケットの中に入れっぱなしということも。
けど、探そうとは思わない。
いつか……なんとなく……偶然と見つかったら御の字。見つからなかったら見つからなかったで、新しいのを買ってしまえば良い。こう他人事のように考えてしまうから。
実際のところ、遺された片方のイヤリングは、どう思っているのだろうか。
ふたつでひとつのものであると言い切れはしない。が、自身の片割れがいなくなって、焦燥感と寂しさに駆られながら時を過ごしているのかもしれない。逆に、テレパシーなんかを使って片割れの居場所を特定して、私に「どこどこにいるからはやくたすけてやれ!!」なんて叫んでいるかも。
あくまで想像だ。
想像が故に、想像しても実感が湧かない。まるで自分のもののことのように思えない。
はなればなれにさせたのは、私自身。はなればなれになったのはイヤリング。
もしこのイヤリングたちが人間だったとしても、きっと、何も変わらない。