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イヤリングの片方を、なくした。

落としてしまったのかもしれないし、家のなかにはあるけれど、どこか目につかない場所にいってしまったかもしれない。鞄や服のポケットの中に入れっぱなしということも。
けど、探そうとは思わない。
いつか……なんとなく……偶然と見つかったら御の字。見つからなかったら見つからなかったで、新しいのを買ってしまえば良い。こう他人事のように考えてしまうから。

実際のところ、遺された片方のイヤリングは、どう思っているのだろうか。
ふたつでひとつのものであると言い切れはしない。が、自身の片割れがいなくなって、焦燥感と寂しさに駆られながら時を過ごしているのかもしれない。逆に、テレパシーなんかを使って片割れの居場所を特定して、私に「どこどこにいるからはやくたすけてやれ!!」なんて叫んでいるかも。

あくまで想像だ。
想像が故に、想像しても実感が湧かない。まるで自分のもののことのように思えない。
はなればなれにさせたのは、私自身。はなればなれになったのはイヤリング。

もしこのイヤリングたちが人間だったとしても、きっと、何も変わらない。

11/17/2024, 12:09:44 AM