木蘭

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5/22/2023, 10:56:47 AM

【昨日へのさよなら、明日との出会い】

毎日19時、お題が更新された瞬間から私の苦悩は始まる。来る日も来る日も、まるで宿題に頭を抱える小学生みたいだ。

とにかく、思いついたことをiPhoneのメモアプリに書き連ねていく。創作モノは、いくつかのシチュエーションを用意して書き出しとキーフレーズを決める。そして、その間を埋めるかのように文章を肉付けしていく。

ところが、どうしてもその先を書き進めることができないときがある。ジグソーパズルに例えると、そんなときは「ピースがはまらない」ときだ。一旦、そのままにして別のシチュエーションで書き直してみる。すると、その先から結末まで一気に書くことができたりする。

こうして「ピースがハマった」とき、文章は完成する。見直して見直して、もう1度見直して…とまで念入りには確認しないが、「これでよし!」と思ったところで文章を投稿する。その瞬間、私は前日のお題に別れを告げ、翌日のお題に思いを馳せるのだ。

それにしても今日は、パズルのピースがハマるのが早かったなぁ。それではまた、明日19時に新たなお題でお会いいたしましょう。さようなら。

5/21/2023, 3:16:16 PM

【透明な水】

「透明な水 イラスト」とネットで調べると、検索画面は濃淡取り混ぜた青色で溢れている。

「じゃあ「透明」っていったい何なんだ?」と、デザイナーの小橋は思った。もともと作品制作のための参考資料として調べていたが、もはや作品はそっちのけで「透明=青?」の件が気になって仕方がない。

「先輩、買い出し行きますけど何かありますか?」

突然、後輩の陰山が声をかけてきた。彼は、周りの誰かが煮詰まっていそうだと見るやいなや、そのフットワークの軽さを活かして買い出しの御用聞きにやってくる。仕事も早いし、気遣いもできる良き後輩だ。

「あ〜、そうだなぁ。透明な水、じゃなくて透明な麦茶頼むわ」

「は? 透明な麦茶って何すか、それ⁈」

「いや、水って透明だけど青く見えるじゃん。麦茶も一見茶色く見えるけど、実は透明なんじゃないかなぁって」

「…わかりました。先輩はそんな意味不明なことを口走るほど疲れていて、麦茶が欲しいってことですよね。行ってきます‼︎」

そう言うと、陰山は外へ駆け出して行った。

たしかに、冷静に考えると「透明な麦茶」はわけがわからない。そもそも、透明な水に麦茶のパックを入れて茶色くなっていくのだから、元を正せば水も麦茶も皆同じじゃないか。

って、この考え方がもう意味不明だよなぁ…小橋の脳内が混沌としてきたころ、陰山が買い出しから戻ってきた。彼の両手には、他のメンバーからも頼まれたであろう、大量の飲食物が入ったコンビニ袋がぶら下がっている。

「はい先輩、ご注文の麦茶と、これ」

そう言って、彼は2本のペットボトルを小橋に差し出した。1本は明らかに麦茶だが、あと1本はミネラルウォーターのように見える。

「なぁ、この透明なの、何?」

「紅茶です、透明な紅茶。たまたま売ってたんで買ってみたんです」

透明な紅茶⁈

小橋は、ますますわけがわからなくなってきた。とりあえず、一口飲んでみる。たしかに、紅茶の味っぽい。今度は、目をつぶって飲んでみる。紅茶と言われれば紅茶の味だが、何か別の飲み物の味に似ているような気がしないでもない。

気を取り直して、麦茶を飲む。

うん、これはもう完璧に麦茶。見た目も味も100%麦茶だ。一口飲んだだけでホッとする、いつもの味にいつもの色だ。

「やっぱ、透明だと落ち着かないなぁ」

と言いながら、小橋はどちらも飲み干した。「さ〜て、やりますか」と大きく伸びをした彼の傍には透明な空のペットボトルが2本キラキラと輝いていた。

5/21/2023, 7:01:51 AM

【理想のあなた】

お題が出たらすぐ文章が書けること。

できればお題発表後、30〜1時間くらいで1つの作品が書けたらこの上なくカッコいい。

しかも、「あなたの作品をまた読みたいんですっ‼︎」っていう意思表示をしていただけるようなものが毎回ご提供できたらば、それはもう小躍りするほどだったりするのだ。

しかし、現実は厳しい。そんな上手くいくはずもなく、今回も、次のお題発表まであと3時間を切っている。

理想からは程遠い姿だが、テーマに沿った文章を毎日書く生活が1ヶ月以上続いているのには自分でも驚いている。その前までの私は「筆不精な物書き」だったからだ。

書きたいことはあるが、どこでどんなふうに書き綴っていけばいいのか。迷っているうちに、気がつけば時間だけが過ぎ去っていった。そんな日々がもう何年も続いた頃に出会ったのがこの『書く習慣』だった。

このアプリと、これ利用して各々の作品を発表している皆さんが私にとっての「理想のあなた」だ。あなた方に少しでも近づけるよう、今はとりあえずお題に沿って毎日書き綴けよう。

で、いいものが書き続けられたら密かに小躍りしちゃうような、そういう物書きに私はなりたい。

5/20/2023, 2:52:27 AM

【突然の別れ】 

いつかこんな日が来ることはわかっていた。でも、それはもうちょっと先のことだと思っていた。さよならも告げず、急に旅立ってしまうなんて。

いつの間にか、一番近い存在になっていた。手を伸ばせば、いつでも触れることができた。そばにいるのが当たり前になって、ほんの少しの間でも姿が見えないと、また会えるのだろうかとたまらなく不安になった。

きみがいなくなったこれからの日々を、どう過ごせばいいんだろう。まだしばらくは、きみと過ごしたあの場所で、よく似た面影を探してしまうだろう。季節が巡り、いつかまた出逢うかもしれないその日まで…


さようなら、期間限定メニュー

5/19/2023, 9:34:57 AM

【恋物語】

恋をしたから小説家になった、
なんて言ったらあなたは笑うでしょうか。

なかなか眠りにつけない10代の頃、私の傍にはいつもラジオがありました。ボリュームは、いつも絞り気味。流れてくる声も音楽も、微かに耳に入る程度で聴くうちに、いつの間にか眠ってしまうのが日常でした。

その日もやっぱり眠れなくて、いろんな番組をちょっとずつ聴いていた午前2時。

「はじめまして。今日から始まるこの番組、よかったら最後までおつきあいください!」

それから午前5時までの3時間、私はいつもよりボリュームを上げ、彼の声に耳を傾けていました。何故かわからないけれど、彼の声は私の心の奥まで真っ直ぐ届く特別な声に感じました。

8年間続いた番組が終了する日、私は初めて番組宛にメールを送りました。番組内で読まれることなど期待していませんでしたが、あなたは番組の冒頭でそのメールを取り上げてくれました。

「明日、世界がなくなるとしたら何を願いますか?」

あなたの願いどおり、その日の放送は無事終了しました。私はというと、このままじゃ心臓がもたないというくらいドキドキして、ますます眠れなくなってしまったことを覚えています。

あなたに感じた特別な感情をどう表現すればいいんだろう。私は、架空のラジオ番組と登場人物でストーリーを創りました。それが、小説家としての私のデビュー作。そして、少しずつ自分の作品が知られるようになってきた今、あなたがパーソナリティを務めるラジオ番組にゲストとして呼んでいただけるとは。

明日、あなたに会ったら何から話そう?
緊張しすぎて言葉が出ないかもしれない。
でも、どうしてもこれだけは伝えなくちゃ。

「あなたに恋して小説家になれました」って。

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