【まだ続く物語】 -星護の終-
夜空に浮かぶ星たちが、どのように生まれたのかご存知でしょうか。実は、生命を終えた者たちの『記憶』の中にはひときわ透き通った『結晶』と呼ばれるものが存在します。結晶を抽出し、精製することで星を生み出す役目を担う者を『星護(ほしまもり)』といいます。星護の終(しまう)は結晶の抽出を、同じく星護の始(はじめ)は結晶の精製を担当しています。
「現世でのおつとめ、おつかれさまでした。私はここ天の国で星護をつとめております終と申します。これから、あなたの記憶の中にある星の結晶を抽出させていただきます。抽出した後もあなたの記憶はそのまま残りますのでどうぞご安心ください」
終は、目の前の『魂者』に例外なくこの挨拶をする。『魂者』とは生命を終えてこの場所(名前はないが便宜上『天の国』と呼んでいる)にきた者のことで、肉体は既にない。
終には魂者の存命中の姿が見えているので、
結晶を抽出するために魂者の記憶を丁寧に聞き取っていく。天の国には時間という概念はないので、現世に換算するとかなり膨大な時間をこの聞き取りに充てている。そして、ある程度の「あたりがつく」と、終は魂者にこう告げる。
「今から結晶を抽出します。私がいいと言うまで目を閉じていていただけますか」
魂者が目を閉じている間、終も目を閉じて左右の掌を上に向ける。やがて、掌に何がが触れたかと思うとズシッとした重みを感じる。これが、抽出完了の合図だ。
「もういいですよ。目を開けてください」
魂者が目を開けると、そこには宝石のように透き通った塊を両手一杯に抱えて微笑む終の姿があった。
「ありがとうございました。無事、結晶を抽出することができました。これから我々星護が責任を持ってこの結晶を精製し、星を形成いたします」
そして、結晶を抽出後の魂者は転生の知らせを受け取るまで天の国で自由に過ごすことができる。終はこの後、星の結晶を全く持たない魂者と出会うことになるのだが…それはまた、物語の続きで。
【空に向かって】
「モクレンってね、ずっとずっと昔から空に向かって咲く花なんだよ」
そう言いながら、君は眩しそうに空を見上げた。
「戦争があっても、災害があっても、長い間同じ姿で咲き続けてるってすごいよねぇ。私、モクレンが咲くのを見るとこれから何があっても大丈夫って言われてるような気がするんだ」
モクレンを見つめる君の眼差しは、愛情に満ち溢れていて思わず嫉妬するほどだった。あの横顔は今も忘れられず、脳裏に焼きついている。
あれから3年が経ち、今年もまたモクレンの咲く季節を迎えた。今ここに、君の姿はない。僕は、君の言葉を思い出す。
「モクレンが咲くのを見ると、これから何があっても大丈夫って言われてるような気がするんだ」
そうだ。きっと大丈夫だ。僕には、モクレンの花とモクレンの花のように生きた君との想い出があるのだから。
【羅針盤】
お前が指し示す方へ進めば間違いないが
間違いがなさすぎて面白みに欠ける
お前が指し示す位置の逆へと進みたいが
そこまでの勇気は持ち合わせていない
結局いつもほんのちょっとズレたところを
おっかなびっくり進んでいる俺がいる
そんな生き方がちょうどいい
【明日に向かって歩く、でも】
明日に向かって歩く、でも
昨日のあの事をつい思い出して
歩みが止まることもある
明日に向かって歩く、でも
歩みの先に居ない人を想うと
涙で前が見えないことがある
明日に向かって歩く、でも
どうしても超えられない壁を目の前にして
途方に暮れてしまうことがある
明日に向かって歩く、でも
先に進めない時は立ち止まって
今できる事を考えてみよう
その場を逃げてもいいし、離れてもいい
違う道を通って回り道をしてもいい
目指すのは遠い未来ではなくて
歩みを進める今、のちょっと先
大丈夫、そうすればいつか
必ずたどり着けるから
私にとって心の灯火は、
根拠はなくても「大丈夫!」だと
言い切ってくれる『推し』がいることです
一生推します!