【まだ続く物語】 -星護の終-
夜空に浮かぶ星たちが、どのように生まれたのかご存知でしょうか。実は、生命を終えた者たちの『記憶』の中にはひときわ透き通った『結晶』と呼ばれるものが存在します。結晶を抽出し、精製することで星を生み出す役目を担う者を『星護(ほしまもり)』といいます。星護の終(しまう)は結晶の抽出を、同じく星護の始(はじめ)は結晶の精製を担当しています。
「現世でのおつとめ、おつかれさまでした。私はここ天の国で星護をつとめております終と申します。これから、あなたの記憶の中にある星の結晶を抽出させていただきます。抽出した後もあなたの記憶はそのまま残りますのでどうぞご安心ください」
終は、目の前の『魂者』に例外なくこの挨拶をする。『魂者』とは生命を終えてこの場所(名前はないが便宜上『天の国』と呼んでいる)にきた者のことで、肉体は既にない。
終には魂者の存命中の姿が見えているので、
結晶を抽出するために魂者の記憶を丁寧に聞き取っていく。天の国には時間という概念はないので、現世に換算するとかなり膨大な時間をこの聞き取りに充てている。そして、ある程度の「あたりがつく」と、終は魂者にこう告げる。
「今から結晶を抽出します。私がいいと言うまで目を閉じていていただけますか」
魂者が目を閉じている間、終も目を閉じて左右の掌を上に向ける。やがて、掌に何がが触れたかと思うとズシッとした重みを感じる。これが、抽出完了の合図だ。
「もういいですよ。目を開けてください」
魂者が目を開けると、そこには宝石のように透き通った塊を両手一杯に抱えて微笑む終の姿があった。
「ありがとうございました。無事、結晶を抽出することができました。これから我々星護が責任を持ってこの結晶を精製し、星を形成いたします」
そして、結晶を抽出後の魂者は転生の知らせを受け取るまで天の国で自由に過ごすことができる。終はこの後、星の結晶を全く持たない魂者と出会うことになるのだが…それはまた、物語の続きで。
5/30/2025, 2:20:43 PM