【さよならは言わないで】
「なんでこんなんになっちゃったんだろうね…?」
泣きながら君は僕にそう問いかけてきた。僕だって分からないし、君にだって分からない。
終わりを迎えたくない僕はずっと君を抱きしめていた。
君もそれを理解してくれて、抱きしめ返してくれた。
本当になんでこんなんになっちゃったんだろ…。
時間は一瞬で過ぎ去ってもう別れの時間に_。
「じゃあ、もうさよならだね」
「さよならは言わないで」
食いつくように君は叫んだ。
「うん、ごめん。じゃあ、またね」
「…うん、またね」
次に会うときは、《恋人》ではなく《知り合い》になるのを知っているからもう一生出会いたくはなかった。
【光と闇の狭間で】
「はは、“この世界”は楽しいね!」
別世界からきた君はそう言う。
この世界と形は一緒なのに人間はいなくて化け物だけがいる、いわゆる“パラレルワールド” と言う世界の住民だ。
もちろん、君の見た目は人間だけど獣のような牙、小さな手からは想像できないほどの握力。まさに化け物。
_僕は君をこの手で殺してみたい。
僕より小さな君は、その鋭い牙を使って抵抗・それともその握力を使って抵抗するのかい?
気になって仕方がないんだよ。
今すぐ君の首に手をかけて力を込めたいくらい。
【キャンドル】
側から見たら、ケンカップル。
事情を知っている人から見たら、バカップル。
いつも喧嘩ばっかりの日々だけど、ちゃんと謝罪だって出来るしお礼だって言える。
でも、なぜか君との距離を感じてしまう。
近いのに遠のいてる感じ。君は何も気にしていないかもだけど、自分はずっと気にしている。
2人を灯すキャンドルが溶けてなくなる前に
この関係を終わらせてしまったらどれだけ楽だろうか。
【子猫】
最近、近所の夫婦が飼っている猫に子猫が産まれたらしい。正直自分は犬派だから、受け取る予定はない。
だが、その夫婦は子供のお金だったり家のお金だったりでかなり困っているようだ。
今の子猫は3匹。他の近所には全員にあげたらしい。
最低でももう1匹は引き取って欲しいみたいだ。
一緒に暮らしている親友にそのことを話すと
「いいじゃん、引き取ってあげようよ」
と言った。
「可愛いね」「うん、すっごく可愛い」
子猫に言っているのか、親友に言っているのかは自分でも分からなかったが、猫と戯れている親友を写真に納めといた。
【秋風】
肌寒くなってきて、手袋をつける人が増えてくる時期。
正直、僕は冬より夏の方が断然好きだ。
ふと隣にいる君を見つめる。
こちらの視線に気づいた君は、こちらを見返してくる。
気恥ずかしそうに頬を赤らめ君は言った。
「別に自分は冬嫌いではないよ」
君がそう言うのなら、僕もそう思う。
秋風に吹かれながら二人一緒に、冬を待っていた。