青空があんまり気持ちいい色をしていたので、たまにはと散歩に出かけた。
暫く歩いていると、前方から片手運転の自転車が近付いてきた。
二十歳前後の青年らしい。
ふらふらと大変危なっかしい運転だ。
道交法違反だ若者よと呆れていると、ハンドルを持たねばならない右手が代わりに握っていたものに気がついた。
花束だ。
青年の持ち物にしては些か不似合いの可愛らしいピンクの花束が大切に握られていた。
花束が風で乱れないようにゆっくりと、そして真剣な顔をして自転車をこぐ青年とすれ違う。
なるほど。
今日ばかりは違反に目を瞑ることにした。
頑張れ青年。
無事の成功を祈る。
お題『花束』
いつでも笑顔で応対してくれる先輩がいる。
本人が忙しそうにしているタイミングで話しかけても、トラブル発生時でも、話しかければいつだって笑顔だ。
怒ったり不機嫌になったりしてもおかしくないのに、そんな顔を見た覚えがない。
真剣な顔は見たことがあっても、彼の纏う雰囲気にネガティブなものを感じたことは全然ない。
何でそんなに笑顔でいられるのですかと聞いてみたことがある。
残業でみんなが疲れ果てている時だった。
先輩はその時も笑顔で、でもどこか不思議そうにこう言った。
「気にしたことなかったんだけど、笑顔の方がいいんじゃないかな。僕が笑顔なら、きっと相手も笑顔になってくれる。それに笑顔でいられるうちは大丈夫だって信じてるから」
だから、この残業も無事に乗り切れるよと、先輩は笑った。
お題『スマイル』
いざそう訊かれると特に思いつかなかったのだが、敢えて挙げるとしたら。
自分は女性でオタクだが、腐ってはいないということ。
これ、下手にSNSに投下すると炎上しかねないのでなかなか書けないのだが、女性のオタク=腐女子と十把一絡げにされることに昔から大変困っている。
ティーンの頃のトラウマで大人になった今でもBLは大の苦手。
できれば見たくもないのだが、この世界にいるとどうしても目に入る。
それはもう致し方ない。
できるだけ踏まないように避けるしかない。
何より悲しいのは、今推している方がBL作品にも多数登場しているため、彼の出演作品や演劇を網羅できないことと、なかなか彼のファンと関わりが持てない件。
彼のファン=BLもいけるタイプなので絡めないのだ。
リア友が増えない原因でもある。
本当に悲しい。
でもこればかりは生理的な問題で改善は今世では無理なので諦めている。
一人でこそこそ推す毎日である。
お題『どこにも書けないこと』
秒針の音が耳障りな朝だった。
目覚ましが鳴る前に体を起こし、まだピントの合わない視界の中で時計を手探りで引き寄せる。
そして、電池を抜いて投げ捨てた。
電池が床を転がる音を最後に、ぴたりと雑音が鳴りを潜める。
静かすぎる部屋が、今の自分にはひどく心地がよかった。
今日は音も時間も気にせず過ごすと決めた。
時計の針にもう文句は言わせない。
今度はすっきりした気分で再び毛布の海へと体を沈めた。
お題『時計の針』
本物を目の前にすると、溢れる気持ちを止めることができなかった。
声が震える。
息もままならない。
大丈夫かと背に手を添えてくれる相方に感謝すら伝えられないまま、どうにか深呼吸。
嘘だろ、信じられない、いいのかこんなこと、内心で飛び交う言葉を何とか集約して、やっと一言。
「久し振りの焼き肉バンザーイ!」
「おまえ、本当に大丈夫か?」
お題『溢れる気持ち』