伊古野わらび

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秒針の音が耳障りな朝だった。
目覚ましが鳴る前に体を起こし、まだピントの合わない視界の中で時計を手探りで引き寄せる。
そして、電池を抜いて投げ捨てた。

電池が床を転がる音を最後に、ぴたりと雑音が鳴りを潜める。
静かすぎる部屋が、今の自分にはひどく心地がよかった。

今日は音も時間も気にせず過ごすと決めた。
時計の針にもう文句は言わせない。

今度はすっきりした気分で再び毛布の海へと体を沈めた。



お題『時計の針』

2/6/2026, 12:19:25 PM