秋になると寒くなる。
普段は近寄らない猫は布団に入って居場所を奪う。
人間は寒くなってしまう。
猫はそんな人間を気にせずぬくぬく過ごす。
いい性格してる。
でも猫って憎めない。
私は毎晩夢を見る。
夢には毎回同じ女が出るが、まったく知らない人。
そして毎度、夢から覚めるとき一言。
「また会いましょう」
目が覚めるたび女を気に掛ける。
あの人は誰?どこにいるの?
そう悶々としていたある日、
父から母が亡くなったと言われた。
だが母は私が生まれてすぐ離婚していて顔も知らない。
離婚理由もどんな人かも知らない人。父は、
母は私を産んですぐ持病が悪化し入院した。
弱っていく私を見てほしくないという母の意向で
離婚したと告げた。
父は私に葬儀に出てほしいと言ってきた。
私は会ったことのない母の葬儀へ参加した。
葬式で遺影を見たとき、私は絶句した。
夢の女と同じ顔だったからだ。
急いで棺に近づくと、夢の中とは違う抜け落ちた髪に
骨のような手。
でも顔は夢と同じ顔だった。
私はそこで涙を流した。
やっと会えた時には全てが遅かったからだ。
お化け屋敷、ホラーゲーム。
スリルを味わうのに色々な方法があるという。
でもスリルを味わうためにバカのことをする
人もいることを知ったのは、学生時代。
母がバレるかバレないかのスリルを楽しむために
不倫をしていた。
父は激怒するだろうなと思ったが、なんと父も不倫を
していた事をバラした。
こんな奇妙な夫婦が身近にいるとは思わなかった。
2人がどうするのか私は気にしていたが、
2人は不倫がバレて興が冷めたのか不倫をやめた。
いつもの家庭がそこにはあった。
私はその不快感から成人後、逃げ出したが
いまだに親を見るも不快に感じる。
天使にとって羽は重要だ。
神の使いを表すものであり、羽がなくなると
堕天することになる。
そんな私の羽は飛ぶことができない。
同族からは
「飛べないのであれば堕天と同じ」
「飾りの羽」
そう言われる。
ろくに仕事も振られないからいつか飛べる日を
主に願う日々。
こんな事を言うなんておかしいと分かっている。
神の使いが神を信じないなんて。
でも、何年も、何百年も祈る私を叶えてくれない
神への信仰心が無くなってきているのだ。
いっそのこと堕天したほうがマシだと思う日々だ。
風が吹くと、ススキが揺れる。
秋を感じる空気と景色。
なんだか切ない気持ち。