セーターの思い出。
小さい頃、セーターのチクチク感とソワソワ感が
不快で着たがらなかった。
親は買ったんだから着ろって怒ってきたっけ。
今ではセーターを着ても平気。
成長を感じるなぁ。
町中で警察や野次馬が集まるビルがあった。
興味本位で近づいてみると、ビルの屋上から飛び降り ようとする少年。
皆がやめろと騒ぎ立てる中、少年が飛び降りた。
少年は、ぐしゃりと鈍い音を立てて私の前に落ちた。
その瞬間、ドンッと突き飛ばされた。
野次馬は私を突き飛ばし、少年の写真を撮る。
そしてネットに晒して自分のアカウントを
バズらせようとする。
スマホから、通知音がしてみてみると
「〇〇市のビルでガキが飛び降りたんだけど!!」
とフォローしている人がポストしていた。
翌日、少年はネットニュースになった。
人々は少年に何があったのか探り、少年を叩いた。
「人に迷惑かけて死ぬとか最悪」
だからといって少年をかばうと偽善者扱いされる。
私はあの日の少年のように、面白いと判断されたら
人に弄ばれる世の中の醜さに落ちていった。
私も、少年と同じく飛び降りたくなった。
今日はいい夫婦の日だ。
だから妻は張り切っていた。
部屋をピカピカにして、花も飾って普段より豪華に
夫の好物を作る。
そして玄関近くで夫の帰りを待つ。
夫が入ってきたらクラッカーを使おうとしていた。
だが妻は知らない。
夫はケーキと花と妻の欲しがっていたぬいぐるみを
持って帰ってきたこと。
まったく、いい夫婦だこと。
わからないことが多すぎて、何をすればいいのか
分からない。
どうしたらいいの?ねぇ、どうしたらいいの?
分からないよ、なんで誰も教えてくれないの?
皆私の事を睨んで蔑んでいるようにしか思えない。
どうしたらいいの?なんで怒られるの?
皆次々にこう言う。
不細工、バカ、ゴミ、話し方が変。
社会不適合者、気持ち悪い…って。
どうしたらいいの?どうしたらいいの?
何もわからないよ。
家の掃除していると古い箱が出てきた。
なんの箱だろうか、と開けると簪や櫛、リボンが
出てきた。すべて古いもので心当たりがない。
家にいた祖父に見せると懐かしそうに箱を撫でた。
「おじいちゃん、それ何?」
そう聞くと祖父は
「これはね、おばあちゃんに若い頃プレゼントした
ものなんだよ」
誕生日プレゼントの櫛、結婚記念日の簪、
母を産んだ時に祖母に贈ったリボン。
「こんなとこにあったなんてなぁ」
そう言って祖父は嬉しそうな顔をした。
今年は祖母の三回忌。
祖母の宝物を持って墓参りに行こうか。