とわ

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8/16/2023, 3:18:28 AM

夜の海


「これが南半球の星か〜。なんか分かる星座とかあんの?」
「いや…全然…調べる?」
「なんだよ天文学部…いい、ただ眺めるだけでいいよ。」
「あはは…うちは夜集まってお菓子食べながら星見る会って感じだったから…。」
オーストラリアの夜の海辺を二人で歩く。異国の海は透き通っていて、砂浜の砂は柔らかい。
海の傍で育たなかった僕たちにとって真っ直ぐに続くこの海の広さは想像を上回るほどだ。
日本の夏はオーストラリアの冬だ。陽が落ちるのは早いけど、気温は涼しいくらいで寒くはない。
短期留学という名目で二人でオーストラリアで過ごして三日目。ようやく夜は自由時間になり、それぞれのホームステイ先から抜け出してきた。
「…夜の海なんて怖いと思ってたけど…街の灯りが後ろにあるとそうでもないね。」
「うん…一人じゃないし、船も出てるね。冬なのに寒くないってすごい。」
「…でも俺は冬は寒い方がいいな。マフラーでぐるぐる巻きになって、おいしくココアが飲みたい。」
後ろから手を握って引き寄せられ、僕は大人しく晶に後ろから抱き締められた。このスキンシップが最近想いを伝えた僕への配慮なのか、晶の本意なのか、分からない。幸い黙り込んでも波の音が押しては引いていく。
海は全て分かっているよと優しく僕に語りかけているようだった。
「…寒くなったら怜のガトーショコラが食べたい。」
「ふふ…いいよ。作ってあげる。」
肩に顔をくっつけたまま晶がぼそぼそと言った。なんだ、甘えてるだけかと分かって少し笑う。
「…寝転がって星見る?」
「うん、見よう。」
夜の海は僕たちを包むように波打って、星空は嬉しげに僕たちを見守るように瞬いていた。

8/12/2023, 7:08:26 AM

麦わら帽子


麦わら帽子にリネンのシャツ。
君の夏の表情を彩るのはそんな組み合わせだ。
世界で一番麦わら帽子が似合うね、そう告げると揶揄われたと思ったのか大きい帽子じゃないと眩しいだけ、と麦わら帽子を深く被ってしまった。
本心なんだけどな。

8/9/2023, 8:01:24 AM

蝶よ花よ


大事に大事に育てられたんでしょう
全て持って生まれたあなた
私はあなたの毒の花になりましょう
さぁ、この蜜を吸って

8/7/2023, 5:59:39 AM

太陽


一緒に育った俺とあの子は、似ているようで似ていない。
俺の髪は真っ黒で、あの子の髪は赤毛みたいな茶色だ。
俺の肌は薄くて、日光を浴びると赤くなる。あの子の肌はしなやかで、日光を浴びるとそばかすが煌めく。
太陽の下のあの子。伏せた睫毛が光に透ける。柔らかな茶髪は夕焼け色に染まって、より特別な横顔になる。
俺はいつからこんなにロマンチストになっちゃったのかな。
あの子と長くいるからかな。シャイなくせにロマンチックな例えをするあの子。たまには俺もそんな風に言葉を紡ごう。
あの子は俺の暮れない夕焼け。

8/5/2023, 8:27:02 AM

つまらないことでも


「それで俺は…って、すごい俺自分の話してるね、ごめん、」
「いいよ、晶が話すの聞いてると…なんだろ。力緩むから。」
「つまんなくて眠くなるって?」
「ち〜がうよ、はは…つまんない話でも安心するってこと。」
「あ〜…まあそれはそれで愛か〜。」
「まあ〜愛かなぁ。」
「そこは断言してくれよぉ。」
「はいはい。愛愛。」
「二回言っちゃだめなのよ…。」

どんなつまらない会話でも、切り上げようとは思わないのは
君だから。

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