ちょいホラーです。
あの日の景色が繰り返される。
「ねぇ、あなたはどうしたい?」
目の前の私が私に問いかけた。
「私、、、やり直したい。」
妙にリアルな夢を見ていた気がする。
過去を追体験する夢を。
「できることならもう思い出したくなかった。」
思わず口からそうこぼれる。
「おはよう!なーなちゃん」
そう言って花ちゃんは後ろから話しかけて来る。
「おはよ、、う??」
この光景を懐かしいと思う自分に違和感を覚えた。
、、何かがおかしい。
私は慌てて周囲を見渡した。
(今私は高校生なはずなのに、どうして中学の時の制服を着ているの??
それに、花ちゃんはあの時転校して、、、)
夢なのかなんなのか、前にもこんなことがあった気がする。
「、、、ねぇ、あなたはどうしたい?」
不意に頭の中で誰かが私に問いかける。
次の瞬間過去を鮮明に思い出した。
花ちゃんが事故にあったあの日、私は花ちゃんの目の前にいた。
「危ない!!」
大きな声と力で引き寄せられ、気づけば横たわっていた。
痛む手足と、理解の追いつかない頭で私は、動かない花ちゃんをじっと見つめた。
本来なら私が轢かれていたはずだった。
なのに、私を庇ったせいで花ちゃんが事故にあった。
(、、、思い出した。)
この曲がり角、いつも待ち合わせに遅刻してくる花ちゃんが珍しく先に着いていて、今日は槍が降るかもなんて軽口を叩いていた。
脇見運転だったらしい。花ちゃんはトラックに轢かれ意識不明の重体だった。
幸いなことに花ちゃんは一命を取り留めたが事故の後遺症で手足が動かなくなった。
それに対し私は、打撲と擦り傷のみで軽傷。
花ちゃんの容態を聞いた時、助けて貰ったくせに、私じゃなくて良かった。
そう頭をよぎった。
「!!」
最低最低最低!!!
私じゃなくて良かったなんて、少しでも考えてしまう自分に驚き嫌悪した。
そんな事を考えてしまった自分が人間ではない何か見にくいような物に感じた。
それで思った。
最初から私が事故にあってれば苦しまずに済む。
と。
だから私は、、、
「ななちゃんどうしたの??」
そう言って私を覗き込む花ちゃんは心配そうにしていた。
「大丈夫、なんでもないよ」
そう言い私は花ちゃんに笑顔を向ける。
もうすぐ例の時間だ。
この交差点をすぎる頃私はもうこの世に居ないかもしれない。
「ななちゃん青になったよーっ危ない!!!」
トラックが私たちを目掛けて突っ込んでくる。
「花ちゃん!!!!」
私は花ちゃんを思いっきり突き飛ばした。
(これで、、やっと!)
「だめ!!!!」
「なな!なな!!!!」
目が覚めると涙を流す家族と花ちゃんの姿があった。
無事で良かった、、。
そう思い涙が溢れた。
良かった。本当に良かった。
これでいい。変えられて良かった。
耳元で
「やり直したい」
そう言う花ちゃんの声が聞こえた気がした。
「雲は白、空は青、風は、、何色だろう」
素晴らしい!次回作も期待してますよ。
笑っているけど腹の底では何を考えているのか分からない。そんな大人が嫌いだ。
どーせお前らは、私の絵じゃなくて金が好きなんだろ。そう言ってやりたくなる。
「あー!!!つまんない!!」
なんで雲は白いのか、空は青いのか。
そんなの当たり前だろって、きっと大人は言う。
きっと大人は変化を嫌うんだ。
見たまんまを描きたがる。
それをいかに上手く描くか。そればかり。
私はね、空を黒く書きたいの、雲はオレンジに書きたいの。それが私の見えている景色なの。
理解されたいと思ってた。
でも、それで私らしさを失ってしまうなら、
そんなものいらない!!
私はキャンパスを破り捨てた。
苦しく感じていた胸のつっかえもいつの間にかなくなっていた。
「よし!描こう!!私の描きたいものを」
そう言って筆を取った。
夏になると何かの気配を感じる。
誰かに見られている。そんな感覚が、、、。
視界の端に何かが写った気がして振り向く。
「、、、隠れてないで出ておいで」
頭隠して尻隠さずとはまさにこのことを言うのだろう。
ネズミのような犬のような白い何かは、声をかけると鳴き声をあげて小さく跳ね。
短い手足を必死にバタつかせ、ベッドに潜り込んだ。
(驚かせてしまったみたいだな。特に危害を加えないのならいてくれても構わないけど、、、)
そのなにかを見つめていると、手前の机に置いてある。羊羹が目に入る。
「そう言えば期限近かったな、、、」
羊羹のラベルを見ながらそうつぶやく。
珍しい羊羹を手に入れたからと祖母が僕にくれたものだ。無駄する訳にはいかない。
「、、、頂くか」
包装を慎重に外すと、光沢のある羊羹が姿を現す。
あまりに美味しそうで思わず唾をごくりと飲むと。
僕はゆっくりと羊羹日手を伸ばした。
「グギュルルル」
未だかつて無いほど大きなお腹の音が鳴り響く。
音のなる方に目を向けると、何かが羊羹を眺めながらヨダレを垂らしていた。
その何かは、僕の視線に気づき咄嗟に逃げようとするが、目の前にあるご馳走には叶わなずしり込みをしている。
その時たまたま、つけっぱなしにしていたテレビに
ポーズをとる犬とその犬にご褒美として、お菓子をあげる飼い主の様子が映った。
賢い犬がいたものだと感心して見ていたら。
直後その何かもテレビに映る犬と同じようにポーズをとり始めた。
「ふふっ、そっか、真似をすれば羊羹が貰えると思ってやってくれたのか。それじゃお礼をしないとね」
そう言ってその何かの前に羊羹を差し出すと。
ちっちゃい手いっぱいに羊羹を持って必死に頬張った。
「、、、え?くれるの?」
ちょっとだけよといいたげに、その何かは僕にひとけらの羊羹を差し出してきた。
さっきはあんなに僕を警戒していたくせに、羊羹ひとつでこんなに距離が縮むとは現金なヤツだ。
僕が差し出された羊羹をありがとうと言い受け取ると、それは嬉しそうにニコニコと笑った。
「私を忘れるのよ、フィン」
そう残してお嬢様はこの世を去った。
生まれ変わるなら何になりたい?
お嬢様はよくその質問を俺に投げかけた。
「俺、、、ですかね」
そう言うとお嬢様は決まって顔をくちゃっとして可愛らしい笑みを浮かべた。
たかが雇われの騎士が王女に恋してしまうなどあってはならない。
だから身分違いの思いは胸にしまうと決めた。
ただお嬢様の幸せだけを願った。
「王女の結婚が決まった。」
その知らせはあまりにも唐突だった。
他国との戦争を終わらせるためお嬢様は利用されたのだ。
お嬢様は皆の前で、それが私の務めだからと強がり笑ったが。
裏で一人泣いている姿を俺は知っている。
せめて俺も他国へ、お嬢様の剣と盾になりたいと願ったが。
戦争に荒れた母国のため、この国に尽くせと王から命を受けた。
俺の結婚を反対する声はかき消され、ついにその日は訪れた。
「私を忘れてね、フィン。、、、愛していたわ」
最後に告げられたのは。最も残酷で優しい言葉だった。
他国に行ったお嬢様は、戦争で家族を失った下民にあっさりと殺されてしまった。
それを知らされたのは、十月が経つ頃だった。
「ねぇ、フィン、生まれ変わるとしたら貴方は何になりたい?」
「俺は、、、、お嬢様のそばでお嬢様の幸せを願い続けたいです。お嬢様は?」
「私はね、、、私の幸せを願ってくれる大切な人のお嫁さんかな」
「誰ですか??」
「ふふっ、今は分からなくていいわよ」
懐かしい、あの頃の記憶。
「忘れろだなんて、、、無理でしたね。寂しくないですか?辛くないですか?、、、幸せでしたか?」
「フィンさん!!!」
「俺も今行きますよ、、、」
お嬢様が居なくなってから、1年後フィンは他国の戦争に駆り出され、その屈強な肉体と精神で敵国を圧倒し
英雄となった。
しかし、英雄を慕う民からの声があまりにも大きく、王政に不満を持つものが現れた。王はその言葉を止めるべく、あろうことか、母国のため戦った英雄の命を奪った。
勉強も運動も何もかも俺はできないわけじゃない。
むしろ全て秀でてると言っても過言ではないだろう。
なのに、いつもいつも褒められるのは兄貴ばかり。
俺が我武者羅に走る横を笑って抜き去って手の届かない所へ行きやがる。
俺は兄貴の背中を追うばかりで一向に抜かせない。
「いいよね、〇〇くんのお兄ちゃんは優秀で、私もそんなお兄ちゃんが欲しかった」
ある日、憧れの先輩からそんなことを言われた。
先輩は自分の理解者だと思っていたものだから。
裏切られたような気がした。
兄貴の話なんてして欲しくなかった。
、、、惨めになるから。
「兄ができることをどうして〇〇はできないの?
努力しなさい」
繰り返し言われるその言葉。
なぜ俺が努力をしていないと言い切るのか、どうして兄貴を引き合いに出すのか、俺は兄貴とは違う人間なのに。
別に褒めて欲しいわけじゃない。
でも優秀な兄の影に隠れる俺でありたくないだけだ。
なのにみんな、兄貴、兄貴、兄貴、兄貴、兄貴の事ばかり。
まるで俺が俺で無くなるような感覚に陥る。
俺が兄貴のようになったら皆はきっと満足するんだろう。
兄に向けてる薄ら寒い笑みを俺に向けてくれるんだろう。
両親も優秀な息子の親と言う肩書きを手に入れてさぞ喜ぶことだろう。
「あー!くだらねー!!」
「随分やさぐれてるのね。〇〇くん。」
「、、、」
「またお兄さんのことで悩んでいるの?
それとも私の姉が言ったことを気にしているのかしら」
「、、、聞いてたのか」
ええ、たまたま。
そう言って彼女は笑う。
「まぁ、気持ちは分からなくもないわ。私も優秀な姉を持っているもの。
、、、でも、私は皆に認められたいわけじゃない。
私を大切にしてくれる人の尊敬できる人でありたいと願うだけ。」
そう言うとあいつは前を向いた
「、、、大切にしてくれる人の尊敬できる人でありたい。か、そっか、ははっ!」
俺のことを見ようとしない両親なんて、俺を認めようとしない周りの奴らだって、それを気にする俺ですらもはやどうでもいい。
俺は兄貴になる必要なんてない。兄貴を追う必要だって。
俺は俺を見てくれて、俺のことを思ってくれる奴らに恥じぬ。そんな生き方ができればそれでいい。
「吹っ切れたみたいね。」
「、、、ありがとよ」
「どういたしまして」
あいつは俺の心を見透かすように目を細めると。
くるりと背を向けた。
「、、、それを気づかせてくれたのは貴方だけどね」
「ん?なんか言ったか?」
「いいえ、何も」
夕日が俺たちを照らす。
この時はほかの誰でもなく、確かに俺たちが主人公だった。