星屑

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夏になると何かの気配を感じる。
誰かに見られている。そんな感覚が、、、。
視界の端に何かが写った気がして振り向く。
「、、、隠れてないで出ておいで」
頭隠して尻隠さずとはまさにこのことを言うのだろう。
ネズミのような犬のような白い何かは、声をかけると鳴き声をあげて小さく跳ね。
短い手足を必死にバタつかせ、ベッドに潜り込んだ。
(驚かせてしまったみたいだな。特に危害を加えないのならいてくれても構わないけど、、、)
そのなにかを見つめていると、手前の机に置いてある。羊羹が目に入る。
「そう言えば期限近かったな、、、」
羊羹のラベルを見ながらそうつぶやく。
珍しい羊羹を手に入れたからと祖母が僕にくれたものだ。無駄する訳にはいかない。
「、、、頂くか」
包装を慎重に外すと、光沢のある羊羹が姿を現す。
あまりに美味しそうで思わず唾をごくりと飲むと。
僕はゆっくりと羊羹日手を伸ばした。

「グギュルルル」
未だかつて無いほど大きなお腹の音が鳴り響く。
音のなる方に目を向けると、何かが羊羹を眺めながらヨダレを垂らしていた。
その何かは、僕の視線に気づき咄嗟に逃げようとするが、目の前にあるご馳走には叶わなずしり込みをしている。


その時たまたま、つけっぱなしにしていたテレビに
ポーズをとる犬とその犬にご褒美として、お菓子をあげる飼い主の様子が映った。

賢い犬がいたものだと感心して見ていたら。
直後その何かもテレビに映る犬と同じようにポーズをとり始めた。

「ふふっ、そっか、真似をすれば羊羹が貰えると思ってやってくれたのか。それじゃお礼をしないとね」
そう言ってその何かの前に羊羹を差し出すと。
ちっちゃい手いっぱいに羊羹を持って必死に頬張った。
「、、、え?くれるの?」
ちょっとだけよといいたげに、その何かは僕にひとけらの羊羹を差し出してきた。
さっきはあんなに僕を警戒していたくせに、羊羹ひとつでこんなに距離が縮むとは現金なヤツだ。

僕が差し出された羊羹をありがとうと言い受け取ると、それは嬉しそうにニコニコと笑った。

6/29/2025, 9:39:00 AM