幸せに
消しゴムを貸してくれた君
落ちたシャーペンを拾ってくれた君
いつも一人でいる僕に話しかけてくれた君
僕は君に恋をした
たまたま君の噂を聞いた
君は汚いおじさんに体を売っているらしい
君は新しいお父さんと体の関係になったらしい
君はみんなに嫌われているらしい
消しゴムを捨てられた君
落ちたシャーペンを踏まれた君
誰にも話しかけられなくなった君
僕は君に恋をしている
僕は君に何もしない 今までもこれからも
君に話しかけないし君をいじめない
けれど僕は君の幸せをずっとずっと祈ってる
「君がまた元気になって僕に話しかけてくれますように」と星に願った
見つめられると
僕が小学3年生の時、ずっと僕の後ろについてくる男の子がいた。その子ははっきり言ってかなりしつこい性格だった。
クラスでは空気のような存在のくせに、僕が友達と話しているところに割って入っては空気を乱していった。
僕の1番の友達は誰かと聞き、その子以外の名前を出すと泣き喚いた。
朝は毎日、家の前で僕が出てくるのを待って一緒に登校しようとねだった。
…一度だけその子が来る前に友達と登校したことがある。その時の彼は本当に恐ろしかった。
彼はクラスに入ると、その友達に駆け寄り、押し倒し、何度も何度も殴った。僕はただその光景を見ることしかできなかった。
その子は振り向いて言った。
「そんなに見つめられると、照れちゃうな」
僕は、僕はあの日を後悔している。
久しぶりに学校に来たその子を殴ったあの日。
彼は、彼は意外と弱かった。
簡単に倒れた。
大きな石があった。
頭を強くぶつけた。
血が出ていた。
息をしていなかった。
僕は彼を見ていた。
彼は僕を見ていた。
彼は言った。その時も、今も。
「そんなに見つめられると、照れちゃうな」
特別な存在
君は21gだけ僕に嘘をついていた。
それを知ったのは君がいなくなる前日だった。
机の上に置いたままにしてあった日記。勝手に見るのはいけないとはわかっていながら、好奇心には勝てなかった。そこに綴られていたのは僕の知らない君の姿だった。
心から愛している人がいたこと、彼は交際中に病気で亡くなったこと、僕はその彼によく似ていること…
「今の彼も愛しているけどやっぱりあの人のことが忘れられない。あの人は特別。」
日記の中でそう言い切った君は悪魔なのだろう。
けれど君を責めることはできない。君の21gはもうこの世にはいないから。
…今ごろ愛する彼と地獄でよろしくやってるんだろうか。僕は行き場のない怒りをどこかにぶつけることさえできず、ただ君だった物体を撫でることしかできなかった。
バカみたい
メレメレ、バカみたい…ロイドはもう妻子持ちだというのに…こんなにも恋焦がれているの…
メレメレは料理なのに…人間に恋してるの…
本当に、メレメレのバカバカバカァ!
二人ぼっち
ピコンピコンピコンピコン
部屋に通知音が響き渡る。見なくても誰のスマホから鳴っているかはわかっていた。
GRAVITYの広告の女の子のスマホだ。
「スマホ鳴っとるで。」
「知ってるよ。今はあんまりスマホ見たくない気分。」
「ほぉん。」
スマホ依存症であろう彼女がスマホを見たくないとは…珍しい。ずっとその気分が続けばいいのに。
僕と彼女が二人ぼっちになるのを夢見ながら僕はそっとバツボタンを押した。