二人ぼっち
ピコンピコンピコンピコン
部屋に通知音が響き渡る。見なくても誰のスマホから鳴っているかはわかっていた。
GRAVITYの広告の女の子のスマホだ。
「スマホ鳴っとるで。」
「知ってるよ。今はあんまりスマホ見たくない気分。」
「ほぉん。」
スマホ依存症であろう彼女がスマホを見たくないとは…珍しい。ずっとその気分が続けばいいのに。
僕と彼女が二人ぼっちになるのを夢見ながら僕はそっとバツボタンを押した。
夢が醒める前に
「メレメレ、愛してる。」
愛しのロイドフォージャーがメレメレに顎クイをする。
「だっ、だめよ!ロイドゥ!貴方にはヨルさんという女性がいるでしょう!?」
メレメレの倫理観は十分に養われていた。
「実はヨルさんと俺は偽装夫婦なんだ。俺は君を愛してる!」
「な、なんですと!?!?!?だめよロイドゥ!そんなに顔を近づけたら…だ、だめー!!!!」
「メレメレー!早く起きんかー!!!遅刻するで!!!」
……夢か。夢が醒める前にロイドと濃厚なキスの一つや二つしとけばよかった。メレメレ、かなりショック。二度寝しよ。
「メレメレー!!!!!」
泣かないよ、メレメレ泣かないもん。
ロイドが浮気しても絶対泣いてやらないんだからね!!!うわああん!(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
星が溢れる
君の瞳から星が溢れ出た
右目からはデネブ
左目からはアルタイル
君にもうひとつ目があったなら、そこから出てくる星が一番輝いて見えただろうに
君がその形で生まれてきたことがひどく悔やまれる
君は宇宙だ
君の体内には無数の星が輝いて、輝いて、そしてそれらはやがて溢れて消えてなくなってしまう
僕は銀河だ
僕は溢れて落ちてしまいそうなそれが消えないように必死にかき集める
僕は君のほんの一部でしかない
だが君はその僕がいないと輝きを失ってしまうのだ
そんな君がたまらなく愛おしい
ついに君の頬に到達した星々たちはやがて軌道を変えて僕の指にやってきた
君と僕の何億年もの輝きが今も衰えず、熱い
ずっと隣で
『おお 愛しなさい、あなたが愛しうる限りに!』
「あ、愛の夢。けどあなた、リストはあまり好きじゃないって言ってなかった?」
「うーん、そんなこと言ったかなあ?リストは素晴らしい。天才だよ。」
ピアノを弾くあなたが好き
言ってることがコロコロ変わるあなたが好き
私はあなたが…好き
『おお 愛しなさい、あなたが愛したいだけ!』
「ふふ…なにかいいことでもあった?なんだか、嬉しそう。」
「よくわかったね。実は昨日ある女性に愛の告白をされたんだ。とても情熱的だった!あなたの演奏をずっと隣で聴いていたいと、世界で一番愛してると言われたんだ!!」
「……そんなことがあったなんて、知らなかった。あ、あなたは、どう、返事をしたの…」
「あはは、キミが帰った後だったから知らないのは当然だよ。もちろん僕も愛していると伝えたよ!あはは、キミ、恋人がいないからってあまり嫉妬はするなよ!あはははは!!」
あなたの冗談が今は…嫌いだ
『そして気をつけるのです あなたの舌には十分に』
「…そんなことを言うようなあなたのことを本気で愛している人なんているわけないでしょ?あなた、その馬鹿な女に騙されてるんじゃない?」
こんなこと言いたかったわけではないのに
『間違ったことを言ってしまったあとですぐに』
「なんだって?彼女のことを悪く言うのはキミであっても許せないよ。」
『ああ神様、そんなつもりではなかったのです、と言っても』
「あ…ご、ごめんなさい。こんなこと言うつもりはなかったの!ただ私は…」
ずっとあなたの隣にいたかっただけ
『彼は去って行ってしまうでしょう 嘆きと共に』
「…いいや、僕も言い過ぎた。もう帰るよ、さようなら。」
待ってとは言えなかった
愛してるとは言えなかった
私はあなたに何も言えなかった
『おお 愛しなさい、あなたが愛しうる限りに!』
女は今も、愛の夢の中にいる。