ずっと隣で
『おお 愛しなさい、あなたが愛しうる限りに!』
「あ、愛の夢。けどあなた、リストはあまり好きじゃないって言ってなかった?」
「うーん、そんなこと言ったかなあ?リストは素晴らしい。天才だよ。」
ピアノを弾くあなたが好き
言ってることがコロコロ変わるあなたが好き
私はあなたが…好き
『おお 愛しなさい、あなたが愛したいだけ!』
「ふふ…なにかいいことでもあった?なんだか、嬉しそう。」
「よくわかったね。実は昨日ある女性に愛の告白をされたんだ。とても情熱的だった!あなたの演奏をずっと隣で聴いていたいと、世界で一番愛してると言われたんだ!!」
「……そんなことがあったなんて、知らなかった。あ、あなたは、どう、返事をしたの…」
「あはは、キミが帰った後だったから知らないのは当然だよ。もちろん僕も愛していると伝えたよ!あはは、キミ、恋人がいないからってあまり嫉妬はするなよ!あはははは!!」
あなたの冗談が今は…嫌いだ
『そして気をつけるのです あなたの舌には十分に』
「…そんなことを言うようなあなたのことを本気で愛している人なんているわけないでしょ?あなた、その馬鹿な女に騙されてるんじゃない?」
こんなこと言いたかったわけではないのに
『間違ったことを言ってしまったあとですぐに』
「なんだって?彼女のことを悪く言うのはキミであっても許せないよ。」
『ああ神様、そんなつもりではなかったのです、と言っても』
「あ…ご、ごめんなさい。こんなこと言うつもりはなかったの!ただ私は…」
ずっとあなたの隣にいたかっただけ
『彼は去って行ってしまうでしょう 嘆きと共に』
「…いいや、僕も言い過ぎた。もう帰るよ、さようなら。」
待ってとは言えなかった
愛してるとは言えなかった
私はあなたに何も言えなかった
『おお 愛しなさい、あなたが愛しうる限りに!』
女は今も、愛の夢の中にいる。
3/13/2024, 2:54:51 PM