君に会いたい。
まだ会ったことのない、
いるかもわからない、
僕が堂々と好きと言える人に、
僕のことを心から好きと言ってくれる人に、
いつか、会えるといいな。
それは、埃をかぶっていた。
あの頃、日記や思いつきをメモしていたノートが見つかった。
私は泣きそうになった。
あの頃の、まだ無邪気に夢や幻想を語り合っていた頃の記憶。
あの頃の、友人とテストの点や部活の大会の結果、カードゲームで競い合った記憶。
あの頃の、親や先生に怒られたり褒められたりした記憶。
そんな様々な記憶が、氾濫したように押し寄せてくる。
だが、開きたいとは思わない。
ここで、埃をかぶって永遠に封印しといたほうがいいのではなかろうか?
そっちの方が、今のモノクロのような刺激もない生活、ただただ単位のための勉強や、将来役立つかわからないようなバイト………
そんなモノクロの今を、あの頃の毎日キラキラしていたあの時と比べるような気がするのだ。
だが、好奇心には抗えなかった。
そのノートの、表紙をめくった。
そこには、こう書いてあった。
「卍漆黒を封印せし魔導書卍」
そっと、表紙を閉じた。
2度とこのノートは開かないと決意しながら。
木枯らしが冬を告げた。
その風は、枯れ葉を舞い上げながら、
「あと数ヶ月で年が終わるぞ。やり忘れたことがあれば今のうちにやっとけ」
と言わんばかりに、僕の背を押した。
とある1人の少年の話。
遠い昔、悪魔が蔓延っており、残酷な事件が多発していた。
その少年は、生まれて間もなく家族と死別し、恋していた幼馴染の少女も自我を失い、異形となり、おもちゃの指輪に封印された。
その時、悪魔が囁いた、
「少女を助けたいならば、5つの結界を破壊せよ」
と。
数年後、少年は青年になり、魔術など様々な勉強を修め、少女を救うため、旅に出た。
5つの結界を破壊するべく青年は進む。魔術で生成した特殊な火打石と指輪で炎を起こし異形となった少女を呼び出し共に戦った。本能的に好いているのか、自我を失っても青年には懐いていた。
旅の末、最後の結界を壊した青年の前に、あの日の悪魔が現れる。曰く、結界はその昔、悪魔を弱めるために、天使、人間その他種族が設置したものだった。そして青年と少女はそれらの末裔だった。二人がこの真実を知る前に両親を殺し、お前たちも殺めるつもりだった、と。
その時、青年は怒りに震えた。しかし、それがいけなかった。今までの旅で蓄積した悪意、怨み、その他諸々の悪い感情が爆発し、闇に堕ちようとしていた。
その時
最愛の人の最大の危機に少女が天使として覚醒を遂げた。成長した彼女は、誰よりも美しかった。
少女により、闇から助けられた青年は、少女と協力し、悪魔を倒すことに成功した。
しかし少女は力を使い果たし、青年の胸の中で永遠の眠りにつこうとしていた。
愛する人が光に包まれ、天に召されていく。
愛する人の温かさに包まれ、天に昇っていく。
再会と別れに心を震わせながら、
青年は言った。「君は、この世界の何よりも」
少女は言った。「貴方は、こんなにも」
「「美しい」」
と。
青年は、幸せそうに微笑みながら消えゆく少女の姿をいつまでも見送るのだった。
この世界は広いって?
そんなわけないだろ。
お前が見てる世界は狭いだろ。
「世界は広い」なんてぬかしていいのは神様くらいだろう?
というか世界ってなんだ?
なんで俺はこんな難しくて無駄なこと考えてるんだ?
単純にいこうぜ。
この世にある全てが世界なんだ。
世界は、広くて、狭くて、美しくて、醜くて、楽しくて、しょーもなくて、簡単で、難しくて、………………、
どうしようもないくらい、意味不明だ。
だからこそ、
自分が見ている「狭い世界」くらい大事にできる、
そんな大人になりたいもんだ。