「折り畳み傘忘れた…」
今日の降水確率は10%以下と聞いたから油断した。
「しかもうちの高校の周辺だけ…ついてねぇ…」
お天気情報によると随分と局所的な雨らしい。
「おや、先輩とあろうものが傘を忘れた感じっスか?」
今日はとことん運がないらしい、
よりにもよってイジってくる後輩も寄ってくるとは。
「天気予報では『曇り』って言ってたから」
「私が見たのだと、
『曇りのち雨』って言ってたっス」
揚げ足も取られる始末だ。
このまま立ち尽くしても埒が開かない、
さっさと濡れながら走り抜けるか…っ
「あの、先輩」
「っ…何?」
踏み出そうとした瞬間ずっこけた。
いきなり後ろから声をかけるな、危ないでしょうが。
「もしよかったら私の傘に入って行きませんか…?」
………
「え、あっ…よろしくお願いします…(?)」
「〜っ!いいから早く入って入って下さい!」
顔が真っ赤な女子と同じ傘に入っている。
不覚にも、この後輩が可愛く見えてしまった———-
と、言う感じの小説を読んだ。
面白かった。
ちなみに僕は高校生では無い。
彼女もいない。
一筋の涙が溢れた。
『ところにより雨』
『2人ぼっち』
世界が凍ってから、数日が経った。
地球規模で起こった異常気象による氷河期、
学者のでは太陽系のバグによる影響らしい。
シェルターに逃げそびれた私たち姉妹は今日も、
古びたラジオが流れる部屋で、コタツを囲んでいた。
「おねーちゃん、みかん取って」
妹は呑気にも、ずうずうしくみかんを要求してきた。
「最後のみかんだから半分ちょうだい」
窓から見る景色は純白に塗りつぶされていた。
灰色の雲が空を覆い、住宅地は雪に包まれている。
妹が呟く、
「もう桜、見れないのかな」
「…せやな」
「また海の家の焼きそば、食べたかったな」
「…せやね」
「おねーちゃんはやりたいことある?」
「…スカイダイビングとか?」
「雪が降ってなくてもやらないでしょ」
———————————-
残りの灯油もわずかになった。
この温もりも残り数分と言ったところだろう。
「生まれ変わったら猫になりたいな」
「…うちは南国の大金持ち」
「あっずるい」
「おねーちゃん、今日はくっついて寝ていい?」
「…ええで、ほな明かり落とすわ」
「おやすみ、おねーちゃん」
「うん…おやすみ」
「…やっぱり来世もおねーちゃんの妹がいいな」
「…うちもそう思う」
「…1人にしないでね」
「…大丈夫、1人ぼっちにはさせへんで」
2つの声が闇に消えた住宅街は、静寂に満ちた。
「ああ、これ夢か」
たまに自分が夢の中で夢の中だと自覚できる時がある。
(『明晰夢』って言うんだっけか)
目の前には喧嘩して気まずくなった友達がいる。
あれから2週間、一度も会話をしていない。
つい感情で出してしまった言葉を今でも後悔している。
いつも通りの会話、いつも通りの表情、
これらを愛せてたらもっと仲良くできてたのかな。
戒めておこう、
夢から覚めても忘れないように。
『人は変えられない』って、『人は変われる』って。
夢から醒めないうちに——。
私は明日旅立つ、
小さな頃から待ち焦がれていた明日。
着替えと食料、ナイフにライター
充電器に寝袋、地図…
最強装備はリュックに詰め込んだ。
いざ前にすると、不安や恐怖がよぎる。
でも、それを上回る期待と希望が私を押し出す。
ドキドキワクワクする!
どんな冒険が私を待ち侘びているんだろう!!
「行ってきますっ!!!」
嗚呼、胸が高鳴る——--!!!!
「付き合ってください!!」
美術部で後輩の女子から告白された。
予想外で面食らったが、満更でもない。
グッバイ童貞…ウェルカムバラ色の青春!
この瞬間から俺のリア充高校生ライフが始まるのだ—-
「私の彼氏が喜ぶプレゼントが思いつかなくて…、
一緒に選ぶの手伝ってくれませんか…?」
「…マフラーとかどう?」
この世界は理不尽だ。
不条理…ではないか…うん………。