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『2人ぼっち』

世界が凍ってから、数日が経った。
地球規模で起こった異常気象による氷河期、
学者のでは太陽系のバグによる影響らしい。

シェルターに逃げそびれた私たち姉妹は今日も、
古びたラジオが流れる部屋で、コタツを囲んでいた。
「おねーちゃん、みかん取って」
妹は呑気にも、ずうずうしくみかんを要求してきた。
「最後のみかんだから半分ちょうだい」

窓から見る景色は純白に塗りつぶされていた。
灰色の雲が空を覆い、住宅地は雪に包まれている。

妹が呟く、
「もう桜、見れないのかな」
「…せやな」
「また海の家の焼きそば、食べたかったな」
「…せやね」

「おねーちゃんはやりたいことある?」

「…スカイダイビングとか?」
「雪が降ってなくてもやらないでしょ」

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残りの灯油もわずかになった。
この温もりも残り数分と言ったところだろう。

「生まれ変わったら猫になりたいな」
「…うちは南国の大金持ち」
「あっずるい」

「おねーちゃん、今日はくっついて寝ていい?」
「…ええで、ほな明かり落とすわ」

「おやすみ、おねーちゃん」
「うん…おやすみ」

「…やっぱり来世もおねーちゃんの妹がいいな」
「…うちもそう思う」

「…1人にしないでね」
「…大丈夫、1人ぼっちにはさせへんで」

2つの声が闇に消えた住宅街は、静寂に満ちた。

3/21/2026, 3:23:13 PM