真岡 入雲

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10/1/2024, 7:45:19 AM

【お題:きっと明日も 20240929】




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(´-ι_-`) 甘酸っぱいの書きたい気分

9/30/2024, 5:04:24 AM

【お題:静寂に包まれた部屋 20240929】

深い眠りから覚醒し、辺りを見回す。
窓から見える見慣れた風景に、見慣れた部屋。
ただし、見慣れてはいるがここは達也の部屋ではない。
隣で眠る"誰か"を起こさないよう、そっとベッドから降り、ひとつため息をつく。
"誰か"に気を使う必要がないことは、達也はよく知っている。
だが、身体にとっては"誰か"を気遣う事はごく自然なことで、そうすべきである、と無意識下に刷り込まれているようだった。

達也はまず初めに服を探す。
一糸纏わぬ姿でいるのは"誰か"との関係が深い仲である事を指し示している。
そして、つい先程まで、そういう行為に至っていたのだということもわかっている。
お陰で、下半身の疲れと、未だに昂る己の中心に辟易しながら脱ぎ散らかされた衣服の中から、自分の下着とシャツ、そしてズボンを拾い上げた。
それ等を、くるくると腕に巻き付けバスルームへと向かう。
全身の汗と、下腹部の体液、そして身体に染みた香水の匂いを落とすためだ。
蛇口を捻り、熱いお湯を頭から被る。
備え付けのシャンプーで髪を洗い、ボディーソープで念入りに身体を洗う。
そして、昂りを大人しくさせ目を閉じる。

『この後は⋯⋯』

シャワーを終え、タオルドライした髪を乾かし、服を着る。
鏡の中の自分の顔をマジマジと見て、大きなため息をひとつ吐き出す。
そこに映るのは精悍な顔をした美丈夫だ。
歳の頃は三十前半、男としては脂の乗った丁度良い頃合だろう。
整った顔立ちで、モデルのような体型。
程よく鍛え抜かれた肉体は、この顔にとてもマッチしている。
そして、長く癖のある髪も、この顔によく似合っている。

「⋯⋯⋯⋯」

世の中は不公平だと、いつもこの時に思う。
鍛え抜かれた肉体も、整った容姿も、おそらく国籍も達也とはまるっきり違う。
黒髪に目の冴えるような青色の瞳、白い肌に彫りの深い顔立ち。
身長はおそらく190近くあるだろう。
アソコも達也のものとは比べ物にならないほど立派だ。
自分がこんなんだったら、どれほど幸せな人生を送れただろうか⋯⋯。

そう、この身体は達也のものではない。
現実の達也は40を過ぎた独身男で、背は165cm、体重85kg、髪は父方の遺伝子の所為で寂しくなり、剃る事にしてもう10年以上になる。
顔もお世辞にも整っているとは言い難い。
同じ親から生まれたはずの兄や姉は母親の血が濃いらしく、達也とは全然似ていない。
父親も整っているわけではないが、一般的であると言える容姿だ。
なぜ自分だけ、と悩まなかったはずがない。
学校でも職場でも容姿のことでからかわれ、自尊心はズタズタだ。
それでも勉強が出来れば良かったのかもしれないが、成績は普通、そう至って普通。
運動は苦手で、小中高と運動会や体育祭の前日はてるてる坊主を逆さまにして雨乞いをしたほどだ。
ただ、他者より秀でるものがなく容姿は寧ろマイナス寄りな男の人生に、一つだけ普通ではないことがあった。
それが、これだ。

眠りにつくと必ずこの夢を見る。
妙に現実じみた夢だ。
初めての時は訳が分からずパニックになり、裸のまま部屋から飛び出した所で夢から醒めた。
2度目はこの体をじっくりと観察して、部屋にある服を色々と着てみたり、自分にはできない髪型を楽しんでいたら目が覚めた。
それからは少しずつやることを変えてみた。
もちろん"誰か"と肌を重ねることもしてみた。
現実世界では叶わない夢を夢の中で叶えることが出来た、が、夢から醒めた後は酷く虚しくなった。
幾度かその虚しさを経験して"誰か"と肌を重ねることはやめた。
夢の中の達也は達也であって達也ではないから。

5年前から見はじめたこの夢には何か意味があるようだった。
それが何なのか達也には分からなかったが、一つだけわかっていることがある。
それはこの夢では達也が取るべき行動が決められているらしいということだ。
その取るべき行動に沿っていれば夢は続き、そうでなければ夢は覚める。
また、部屋の中にいる場合はある一定の時間が過ぎると夢が覚めるようだった。

そしてこれまで分かっている条件は3つ。
まずはベッドから出てシャワーを浴びること。
体の汚れは当然として、香水の匂いもしっかりと落とさなければならない。
そうでなければ、部屋から出て通りへ足を踏み出した瞬間、獰猛な犬に噛まれることになる。

次に服装。
クローゼットの中にはたくさんのオシャレな服があるが、そのどれも着てはいけない。
着るべきなのは床に散らばっている服で、それ以外の服を身につけていると通りの途中で車に泥水をかけられ夢から醒める。

それから"誰か"に触れないこと。
触れれば"誰か"は目覚め、部屋から出られなくなる。
そしてその間はほぼ強制的に、"誰か"と肌を重ねることになる。
自分にどんなにその気がなくても、だ。
自分の意思とは関係なく、口から愛の言葉が紡がれ、中心が昂り、虚しさの中"誰か"の中で果てるのは、精神的にキツく目が覚めてからもなかなか浮上できないほどだ。
気持ちいい思いをしているんじゃないか、と責められそうだが肉体の快楽が精神の快楽とイコールであるとは必ずしも言えないものだ。
ましてや"誰か"は夢の度に違う人物で、若い女性の時もあれば、壮年の男性のこともあった。
せめてもの救いは、誰一人として達也の知る人物ではなかったことだろうか。
また"誰か"は触れさえしなければ、どんなに大きい物音を立てても目覚めることはなく、ただベッドで寝ているだけのモノに過ぎなかった。

達也は乾かした髪を一つにまとめると、手に財布と部屋の鍵を持って玄関に向かう。
この時、時計や携帯電話など時間のわかるものを身につけていてはならないようだった。
それを持っていると隣のブロックに足を踏み入れることができないのだ。
目に見えない壁のようなものに阻まれ、同じ場所をグルグルと歩き回ることになる。
この条件は見つけるのに、ひと月近くかかった。
部屋を出て鍵をかけ、少し狭い階段を3階分下りる。
重厚な鉄の扉を開いて通りへ出たら、左に進む。
足元は昔からの石畳。女性たちからはヒールで歩き難いと評判が悪いらしいが、観光客には時代を感じるこの雰囲気が良いと大好評だ。
通りを5分ほど歩く。
途中、犬の散歩中の女性二人と、おそらく通勤途中の女性ひとりと目が合うので爽やかな笑顔を浮かべて目で挨拶をする。
これも無視をすると、後ろから走ってくる自転車にぶつかられて目が覚める。
焼きたてのパンのいい匂いがしてきたら、目的の店が近い証拠だ。
店に入り、バゲットを1本とクロワッサンを2つ購入する。
このパンの種類と本数の条件を見つけるのが今の課題だ。
これで通りに出て何事もなければ、パン屋の条件はクリア出来たことになるのだが。

「⋯⋯⋯⋯ダメだったか」

現実の自分のベッドで目覚め、達也はぽつりと声を漏らした。
6畳二間続きの古いアパートの天井には、人の顔に見える木目のある板が打ち付けられている。
大家さんが良い人なのと、会社が近くて便利ということもあって、かれこれ20年近く住んでいる。
親や兄弟にはもう少しいいところに住めと言われているが、達也自身はその必要性を感じていなかった。
彼女や友達を呼ぶわけでもなく、会社から帰って寝るだけの場所。
たまの休日は掃除をして、平日のための料理の下拵えと、常備菜などを作っていると時間が無くなる。
以前は本を読んだりもしていたが、今は1時間ほどの空きがあれば、寝てあの夢の中にダイブするようになっていた。

誰かの人生の追体験をしているのかもしれないと思いつつ、ゲームをしているような感覚に陥っている。
先に進むためにはたくさんの条件があり、その条件を一つ一つクリアしていく。
達也は夢の中の人物の名前も、性格も、仕事も、家族構成も何一つ知らない。
知っているのは達也とは違ってオシャレな家に住んでいて、愛する人がいて、目が覚めてその人のためにパンを買いに行っていると言うこと。

「うーん、3時か。もう1回はいけるな⋯⋯次はバゲット2本とクロワッサン2つにしてみるか」

達也はもう一度目を閉じる。
睡魔はすぐそこにいるから、あの夢で目覚めるのは容易なことだろう。
なぜこんなにも真剣になって、あの夢をクリアしようとしているのか分からない。
ただあの夢をクリア出来たら、自分の中で何かが変わりそうな気がする、ただそれだけのために達也は何千回と、ほとんど内容の変わらない同じ夢を見続けている。

静寂に包まれた部屋に1人の男の呼吸が響く。
その夢の結末が、己の人生に多大な影響をもたらすことも知らずに。

静寂に包まれた部屋で一人の男が目覚める。
何千回と繰り返してきた夢の終わりが、すぐ近くまで来ていることを知らずに。


ある日、地球上から一人の男が忽然と消えた。
最後の目撃者はパン屋の店員で、バゲット2本とクロワッサン3つを購入した男が、店から出た瞬間に姿が見えなくなったという。

ある日、一人の日本人の男が目覚めなくなった。
大家の話では4日前の夜、いつも通り日付をまたぐ頃に帰宅したようで、夜中トイレに起きた際、玄関の鍵を開ける音を聞いたという。
無断欠勤が続いたため、会社の同僚が確認に来たところ、彼は普通にベッドで眠っていた。
だが、声をかけても体を揺すっても起きる気配がなく、病院へ搬送したが、以降1度も目覚めることはなかった。

彼らは何処に行ったのか、誰も知らない。

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(´-ι_-`) もうちょっと、こう⋯⋯才能が欲しいな。


9/29/2024, 8:12:30 AM

【お題:別れ際に 20240928】




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(´-ι_-`) 入力が遅いんだな⋯⋯ムムム⋯。

9/28/2024, 6:32:39 AM

【お題:通り雨 20240927】



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(´-ι_-`) ゲリラ豪雨とは違うらしい。後日up。

9/27/2024, 8:21:29 AM

【お題:秋🍁 20240926】【20240927up】

「う〜ん?」

秋は秋⋯だよな。
🍁は?
紅葉、椛、栬、楓、槭樹、鶏冠木⋯⋯、いやいやいや、わけわからないし。

秋に産まれた一回り年下の妹。
今年16歳になる彼女に、何か欲しい物はあるかと聞いて返ってきたのが『秋🍁』のメッセージ。
何かの暗号だろうか?
わからない。
もう一度聞いてみるか、と、メッセージを送ったのが昨日の昼の事で、未だに未読のままだ。
いつもならすぐに返信が来るのだが、音沙汰無し。
通話なら出るかと思い掛けたんだが、こちらも出る気配がない。
果てさて、どうするか。
取り敢えず家にかけてみるか⋯⋯。

「う〜ん、出ない」

仕方が無いので、両親にメッセージを送ったが、コチラも反応無し。
ただ、これはいつもの事なので、間髪おかずに電話を、と思ったところで向こうから掛かってきた。

「もしもし?」
『あ、友紀、あんた今日休みよね?』
「へっ?あ、うん、そうだけど、どうし⋯」
『今すぐ家に帰って!』
「は?家って、俺家に居るけど?」
『あんたのアパートじゃなくて、うちよ、うち!昨日から可奈と連絡がとれないのよ』
「連絡がとれないって、母さん達は今どこに居るんだよ」

通話をしつつ、家を出る準備をする。
財布と車のキーを持って、テレビを消す。
おっと、スマホの充電器も一応持っていく。

『私は北海道、お父さんは沖縄に出張中よ』
「はぁ?いつから?」
『お父さんは火曜、私は木曜日からよ。2人とも来週の水曜まで帰れないのよ』
「じゃぁまさか可奈は一週間くらい一人ってこと?」
『えぇ、あの子も高校生になったし、家事全般できるから大丈夫だって本人も言うから。これまでも2日とかは、普通に留守にしていたし』
「わかった、今から向かう。そうだ、最後に可奈と連絡取れたのはいつ?」
『昨日の昼前よ』
「了解。着いたら連絡する」

おっと、実家の鍵も持ってっと。
俺のアパートから実家までは、高速を使って2時間半くらいかかる。
今日は土曜だから、もう少しかかるかもしれない、そうなると昼過ぎか。
急がないと。



「⋯⋯⋯⋯」
「あれ?お兄ちゃん、どうしたの?」

玄関のチャイムを鳴らしても出てこないから、焦って鍵開けて家に入ってみれば⋯⋯、リビングでテレビの大画面でアニメ鑑賞をしている女子高生が一人。
ヘッドフォンをして、飲み物とお菓子をきっちりと準備している。
その横には愛犬と愛猫が幸せそうに寝そべっている。

「どうしたのってお前、ずっとソレ見ていたのか?」
「コレ?これはさっき見はじめたとこだよ。その前は別のを見てた」
「⋯⋯LINE、見てないのか?」
「あー、うん、見てないってか、見れないんだぁ」
「見れない?」
「スマホ、壊れちゃって」
「⋯⋯⋯⋯それは昨日の昼前にか?」
「そう!よくわかったね」
「あー、うん。家の電話も繋がらないんだが?」
「それも壊れてる」
「へっ?」
「一緒に壊れちゃった」

可奈はそう言って、ペロッと舌を出した。
聞けば、昨日は学校が休みで可奈は朝から家の掃除をしていたらしい。
一通り部屋の中の掃除を終えて、窓掃除をしようとバケツに水を汲んで運んでいたところ、愛犬と愛猫がじゃれあっていた所に濡れた雑巾を落としてしまい、それに驚いた愛猫が可奈の足に激突。
バランスを崩した所で愛犬が可奈のスリッパを押さえつけてしまい、あえなく後ろに転倒。
その際持っていたバケツが宙を舞い、固定電話とその横に置いていたスマホが見事水浸しになりご臨終と言う、漫画やアニメの1場面のような出来事が展開されたらしい。
因みにその瞬間はペットカメラにバッチリ映っていて、後に某動画サイトでミニバズリした。
その後俺は事のあらましを母親に連絡し、可奈のスマホと家の電話機を買い、回る寿司屋で夕飯を食べ、夜は可奈と某カートゲームをして遊びいつの間にか眠っていた。
味噌汁のいい匂いに誘われ目を覚ますとテーブルの上には朝食が用意されていた。

「お兄ちゃん、目玉焼きは半熟だったよね?」
「⋯⋯あぁ」
「かけるものは?」
「塩とコショウ」
「了解〜」

テーブルの上にコンっと塩とコショウが並べられる。
可奈に早く座るよう催促され、俺は席に着いた。
ついこの間まで、庭を走り回っているだけのお転婆な女の子だったのに、しっかり家事をこなしているのを目の当たりにしてちょっと感動している俺がいる。
『いただきます』としっかり挨拶をして、朝食を食べる姿にまで何で感動しているんだ、俺は。

「あー、そうだ、忘れるところだった。誕生日プレゼント、何が欲しいんだ?LINEの返事の意味が全然分からなかったんだが」
「うん?あれ?私何て返したっけ?」
「『秋』と『🍁』だ」
「え、わからない?⋯⋯えー、どうしよう、なんて言えばいいのかな」
「もう一度聞くぞ、何が欲しいんだ?」
「秋!」
「いや、だから、秋って何だよ?」

ヤバい、女子高生の言っていることがわからん。
秋には秋以外の意味があったりするのか?
季節の秋以外に何か意味があるとか、俺習ってないんですが、文科省様!
ジェネレーションギャップなのか、これは。
俺も年だと言うことなのか、いや、確かにアラサーだけど。

「えー、だって、春さんと夏がいるから秋もいればいいのにって思って」
「春さんと夏⋯⋯って、え、ペットが欲しいってことか?」
「そうだよ。わかんなかった?」
「⋯⋯オニイチャンニハ、ムズカシカッタ、ナ⋯⋯」

春さんは愛猫の名前で夏は愛犬の名前だ。
どちらも名前と同じ季節に家に来た。
因みに名付け親は可奈だ。

「あのね、この子がいいなぁって思って。あ、お母さんとお父さんにはOK貰ってるよ。お兄ちゃんが買ってくれるなら問題ないって。動物病院の先生も見てくれるって言ってた」
「⋯⋯⋯⋯こいつは」

知ってる、某動画サイトで時々見かけるやつだ。
動きが可愛いというかおじさん臭いというか、そんな感じで何故か癒されるんだ。
うん、会社でも女子社員達が昼休憩にキャイキャイ騒いでいたのを知っている。
その時に、販売価格もちらりと耳にした。

「ね、お兄ちゃん」
「⋯⋯⋯⋯ゴメン、無理だ」
「えー、何でぇ」
「なんでって、可奈、こいつがいくらするか知ってんのか?」
「知らない」
「⋯⋯ふぅ、聞いて驚け。百万だ」
「うわっ、高っ!」
「流石に買えん」

いや、頑張れば買えなくはないけど、妹の誕生日プレゼントに使う金額ではない。
母さんも父さんもわかってて言ったな、きっと。

「え、じゃぁこっちの子は?」
「これは、アラスカンマラミュート⋯、いやいやいや可愛い、確かに可愛いけど、こいつすげぇデカくなるよな?」
「え、ダメ?」
「うっ、ちょっと待て⋯⋯」

なになに、えーと平均価格は⋯⋯。

「諦めてくれ」
「えー」
「ゴメンな」
「うーん、じゃぁアルパカとか!」
「いや、価格上がってるし」
「えー、じゃぁ⋯⋯」

結局、その日のうちに『秋』が実家に招かれた。
チンチラというげっ歯類のネズミやリスのお仲間、手っ取り早く言うとおっきいハムスターだ。
チンチラ本体とゲージや餌など1式揃えたので、それなりの金額になったが、おじさんのようなあいつと比べれば可愛い出費だ。

「いいか、戸締りはキチンとしろよ」
「はーい」
「夜更かしするなよ」
「はーい」
「変な奴について行くなよ」
「はいはい」
「それから⋯⋯」
「もう、大丈夫だってば。ほら、早く帰らないと明日起きれなくなるよ!」
「やっぱり今日も泊まって⋯⋯」
「明日、会社でしょ。私は大丈夫だから」
「でも」
「ほーらっ」

何だかんだで家に着いたのは22時頃で、家に到着したことを家族のLINEグループに報告した直後、母親から通話が入った。

「もしもし?」
「お疲れ様、スマホと電話代は後で振り込んでおくわね」
「はーい、宜しく」
「それとチンチラ、買ってあげたのね」
「ん、まぁ。欲しがってたし?」
「高かったでしょう?」
「いや、マーモットに比べればチンチラなんて安いよ」
「マーモット?何それ。それに安いって友紀⋯⋯チンチラ5万くらいじゃなかった?」
「あー、まぁ。ゲージとか餌とか色々揃えて8万くらいかな?」
「高いじゃない」
「え、でも⋯⋯⋯⋯確かに、高いな。あれ?」

マーモットの百万に比べれば⋯⋯、いや待て俺。
妹の誕生日プレゼントに8万って、使いすぎじゃないか?

「友紀、あんたチョロすぎ。可奈は初めからチンチラが欲しかったのよ」
「えっ?」
「でも高いから無理かなーって言ってたの」
「高いって⋯⋯」
「あんたいつも大体1万か2万くらいじゃない?プレゼント代」
「あ、うん」
「だから初めからチンチラが欲しいって言ってもダメだったでしょ」
「うん、たぶん」
「ほら、可奈の作戦勝ちね。あんた騙されないように気をつけなさいよ。じゃぁね、おやすみ」
「おやすみナサイ⋯⋯」

俺は、騙された⋯⋯のか?
でも、まぁ、凄く嬉しそうだったから、良いか。
可愛い妹が喜ぶなら、兄はこれからも喜んで騙されてあげようと思うよ。


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(´-ι_-`) お兄ちゃん欲しかった。

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