帰省してきました。
【2】
やっと顔を見ることが叶ったのは、退院当日だった。
病室へ迎えに行くと、父はベッドに腰掛け、看護師さんから薬の説明を受けているところだった。
背を丸め小さく萎むように痩せ衰えた父。
看護師さんが去って父と二人きりになると、込み上げてくる感情が涙となった。
父の目の前にしゃがみ込むと、すぐ近くに父のしわしわの手があった。
「すっごく…心配した…」
その手を両の手で包むと、もう嗚咽を堪えることなんて不可能だった。
子供のように泣きじゃくる私の後頭部を、父の空いた手のひらがよしよしと撫でてゆく。
ゆっくりゆっくり何度も何度も優しく優しく。
最後に撫でられたのもいつのことか忘れるくらいだったけれど、父の手のひらに慰められて落ち着きを取り戻した。見上げると父の瞳も濡れていた。
【1】
父のことを書こうと思う。
今、父は脳梗塞で入院中、あと2日で1週間になる。
幸いなことに搬送が早かったことと、本人の人並み以上の胆力の強さ(四柱推命で言われた!)からか、命に別状は無かった。
私は今、父と離れて暮らしている。
距離にすると600Km。
簡単には帰ることの出来ない諸々の事情があって、帰省は目下待機中だ。
今朝は父の夢を見た。
父の逆鱗に触れ怒鳴り散らされる夢。
と、場面は変わって、父の後を付いて散歩をする夢。
どちらの父も現実の父の一面で、おっかなかったけれど、懐かしく心温まる夢だった。
夢の中の父に言おうとしていた。
「こうしてると幼い頃のことを思い出すね」
今、父に会いに行ったら、きっと泣いてしまうだろう。
ベッドに半身を起こした父の両肩を抱いて、胸に顔を埋め、号泣するに違いない。
と、いうようなドラマの父娘再開の感涙シーンである。
父は私をより一層好きになってくれるし、私も父への愛情を再認識するに違いない。
ただ、周りで見ている母や妹は、いいとこ取りの私のことをどう思うのだろう。
本日の未送信メール
「お父さんと散歩をする夢を見ました。小さい頃を思い出して懐かしかったです。また一緒に散歩したいです。」
「根上りの松(寝上りを待つ)のことはまだ覚えていてくれてますか?」
なんたること
鈴木保奈美さんの「あの本、読みました?」のエッセイ回を視聴後、無性に読みかけのエッセイを読みたくなる。
エッセイと言っても実際は嘘日記なのだけど。
川上弘美さんの「東京日記6」の読みかけの頁を開き、そろそろ最新刊が出る頃では?いや、もう既に出た後では?と気になり始めネットを探る。
と、「東京日記7」は出ていた。しかも既視感のあるサブタイトル。
「館内はお雛様でいっぱい」
こんなタイトル買い忘れるはずは無い。
小走りで私の本棚内の「東京日記コーナー」を確認すると、なんたること、其処には7が鎮座ましましていて、ひたむきに読まれることを待っていた。
ひと度「東京日記」を読み始めると、頭の中が東京日記風になってくる。
みなさんはそんなこと、無いですか?
ありがとう、ごめんね、かー。
たくさんあるなぁ。
どっち側にしても、その先を望むのは自分でも野暮だって分かってる。
うん、分かってる。だけど。
〜ありがとう、ごめんね〜
本当に好きな人には試したくなる。
〜愛情〜