帰省してきました。
【2】
やっと顔を見ることが叶ったのは、退院当日だった。
病室へ迎えに行くと、父はベッドに腰掛け、看護師さんから薬の説明を受けているところだった。
背を丸め小さく萎むように痩せ衰えた父。
看護師さんが去って父と二人きりになると、込み上げてくる感情が涙となった。
父の目の前にしゃがみ込むと、すぐ近くに父のしわしわの手があった。
「すっごく…心配した…」
その手を両の手で包むと、もう嗚咽を堪えることなんて不可能だった。
子供のように泣きじゃくる私の後頭部を、父の空いた手のひらがよしよしと撫でてゆく。
ゆっくりゆっくり何度も何度も優しく優しく。
最後に撫でられたのもいつのことか忘れるくらいだったけれど、父の手のひらに慰められて落ち着きを取り戻した。見上げると父の瞳も濡れていた。
5/18/2025, 1:02:25 PM