相上おかき

Open App
8/29/2024, 10:57:21 AM

#言葉はいらない。ただ……

「好き」
「愛してる」
「世界で一番だよ」
「君以外何もいらない」

 嬉しい。嬉しいけど、どこか薄っぺらくて。
「私以外にも言っているんでしょ?」
 なんて聞く勇気もなくて。
 貴方の言葉を真っ直ぐ信じられるだけの自信もなくて。

「じゃ、今日の帰りは遅くなるから」
 そう言って当然のように家を二日開ける。ホワイト企業だから泊まることはほとんどないはずなのに。
 スーツから香る甘い香水も、ハートマークのついたLINEも。何かの間違いだったらよかった。私への愛情が戻ってくれたらよかった。

 愛を囁く言葉なんていらない。ただ、昔のように手を繋いだり、抱きしめたりしてほしい。
 そんな夢も、浮気相手にも、もう、かなわないだろうけど。

8/18/2024, 10:24:42 AM

#鏡

外で目に入る鏡の中の私や
写真に写っている私は
とてつもなく不細工で

親に申し訳ないから口にしないけれど
こんな顔に生まれて良かったとは
一度も思ったことはない

でも、家の洗面所の鏡でみる私は
少し元気が出るくらいには
可愛い笑顔をしている

人から見える私も
洗面所の鏡の私のようだったら良いのに

8/14/2024, 9:47:36 AM

#心の健康

今日は二度寝しませんでした
朝ごはんもしっかり食べました
朝から勉強取り組みました
To Doリストにチェック入れて
黒くなった手の側面ににっこり
やればやるほど増えてく問題
やらなければ置いてかれる時間
今日は昼過ぎから少し辛くなりました
やらないとやらないとやらないと
終わらない終わらない終わらない
でも今日はやることやりました
明日頑張るために気持ちを楽にします
勉強は大事だけれど
身体や心が壊れたら意味がない
未来の私の心の健康を優先します!

8/3/2024, 10:13:59 AM

#目が覚めるまでに

「いやだ!! 入りたくない!!」
 駄々をこねる妹の声を聞き流して、僕は妹の背中を強く押した。
 透明なカプセルの内で妹は叫んでいるが、何を言っているのか全く分からない。小さな拳ではどれだけ殴ってもガラスの扉を動かすことすら出来ない。
「先生、スイッチを入れてください」
 隣に控えていた専門医の先生に頭を下げ、僕は医療センターを後にした。
 未知のウイルスが流行り出した今、感染していない人々ができることはコールドスリープをして特効薬やワクチンが完成するまで待つことだ。
 両親は数年前に事故で死んだ。妹と二人で暮らせるくらいの金はあったが、僕と妹が二人ともカプセルに入れるほどの金はなかった。
 だから僕は妹をあのカプセルに入れた。
 一人しか入れないなんて言ってしまえば、妹はすぐに「おにいちゃんが入って」と譲らないだろう。その優しさは僕ではなく、将来できる友人やパートナーに向けて欲しい。

 神様。本当にいるのなら、僕に降り注ぐ全ての幸運を妹に渡してください。
 妹は十年後に目を覚ますらしいです。あの子が幸せに生きられるように、あの子がこれ以上不幸にならないように。
 どうか、どうか……妹の目が覚めるまでに世界が変わっていますように。

8/3/2024, 8:03:59 AM

#病室

 小学生の頃だったと思う。
 目を覚まして、ご飯の匂いに誘われて台所に行くと、母の代わりに父が食事の用意をしていた。
 父は料理が得意ではない。作った目玉焼きは裏が焦げていて噛み千切れず、黄味はものすごくかたい。味噌汁は具材の大きさがばらばらで、ナスは少し生っぽかった。
 父は普段より一つ声のトーンを下げて、
「お母さんは病院に運ばれたんだ」と言った。だから、父は病院に向かわないといけないこと、しばらくは祖父母が私たちきょうだいの世話をしてくれること、私は中々現実を受け入れられなかった。
 昨夜両親は食事会だとか行って出かけて行った。そこで食べた何かがあたったのか、体調が悪かったのと相まって救急車を呼ぶ騒ぎだったらしい。
 私たちきょうだいは何も知らないまま朝を迎え、母がいなくなった日々を送ることになった。
 幸い母は大事に至ることはなかったが、しばらくは面会も難しい状態だった。確か、3ヶ月は会えなかった。
 久しぶりに会った時、母の腕は細くなり、点滴を幾つも刺していて、ベッドに横たわったままだった。
 少し話せたけれど、本当に少しだった。
 半年経った頃には病室で普通に話せるようになり、私たちも面会することができた。
 何もない病室。そこに私たちは折り紙で色を付けていった。香りはないけれど、ありえないほどにカラフルな花畑の魔法をベッドの上にかけた。
 青のダリア、黄色のバラ、銀色のスミレ。倍増していく手裏剣軍団(犯人は幼稚園生の弟)。
 母はいつも笑っていた。ありがとうと言ってくれた。
 そして、車椅子だけど家に帰れることを教えてくれた。
 それだけで嬉しかった。

 あの時、もしかしてたら死んでたかも。なんて母は笑って言うが、本当に生きていて良かった。

Next