umina*

Open App
4/21/2024, 5:29:06 PM


雨が降る。
私のなき声は、誰にも届いていない。
この瞬間にも同胞たちは、誰にも知られずいなくなっていく。
降りしきる雫が、地面に落ちる様に。


私は今日も空を見上げている。暗い狭い路地裏で。
今にも街に呑まれてしまいそうなほど小さい翼。

次第に灰色の雲が立ちこめる。
雫が1つ、また1つと落ちてくる。

それでも、上を見上げる。狭い空に、同胞の姿。
黒い翼を広げて、雨など諸共せずに駆けていった。

いつかの日を思い出す。
…あれほど、引き留めたのにあの人は行ってしまった。
悔いなきその微笑みが、こびりついている。

大空をかけていくその背中は、
とても勇敢で、憂うものなどないようだった。

彼らの最後は知っている。
誰にも知られずに朽ちていくと。

私もその1部になる、それが許せない。

でも、でも。もっと許せないのは、
この狭い路地で独り、あの人に置いていかれたまま、
朽ちていくこと。


次第に空が晴れる。
私は少し大きくなった翼を広げて、飛び出した。

空がオレンジ色に染まって、太陽が眩しく輝いていた。

ここにいるよ。ってあの人に届くように鳴く。
私の鳴き声は、届いているだろうか。


朝露が一粒落ちて、私は起きる。
朝一番に群れを飛び出していく。
あの頃の私とは、見違えるほど大きな翼を羽ばたかせた。

最後にあの人がいたのは、この山だと聞いた。
あの背中を追ってここまで来た。ただそれだけの理由。


突然の雨。
これまで何度も同胞の死に際を見てきた。
今回も看取ってやるだけの話だったのに。

横たわった「その人」
私の泣き声は、誰にも届かない。
こんなに呆気ないものだったなんて。


涙が雨に消えていく。命も、消えていく。
それでも私は、飛んでいく。
最後に朽ち果てるその日まで。

4/18/2024, 4:05:21 PM

目を閉じた。

真っ暗な世界に私は色を創造する。

快晴の青、雲の白、唇の赤、瞼裏の黒。

どれだって素敵で、どれだって容易だった。


じゃあ色が無かったらどうだろう。

空も、雲も、人も、夜も。

ありはしない世界、存在を許されない世界。


もちろん私の居場所もないだろう。

立つべき地面も、そこに立つ足だって無い。



だからこそ、自由にわくわくできる。

無色の世界を描くこと。そこに色をつけること。

それはこの世にない唯一の「色」を描けることだと。



私は目を開かない。

開けば、たくさんの色が輝いて見えるから。

これは見ないふりじゃない。

私が立つ地面を、私だけの色を、描くために。


今日も無色の世界を塗り替えていく。

4/16/2024, 4:11:53 PM

「わたしを連れ出して!」
声が聞こえた気がした。

真夜中、無音の泣き声の中で。

私が閉じ込めていただけだった。
探していた心はすぐそばにあった。

筆を走らせる、無我夢中で。
無邪気なわたしを掬い出す為に。

4/14/2024, 4:24:35 PM


そうだ、神様へ手紙を書こう!

そう小さな僕が思いたったのは、泣き虫な性格を直すためだ。

どっかで聞いた話。
神様は僕たちのこと守ってくれてるんだって。

だからお手紙を送って、それで仲良くなって…
神様と僕だけの秘密の関係を作るんだ。

秘密を守るかわりに、僕のことを守ってくれるって
信じていた。



また良くないことが起こった。

他人とどうやって話をしたらいいか分からない。
自分がやりたいことを言えず、流され続けた。
なにを考えているか分からないと言われた。
誰かを傷つけた、自分も傷ついた。

もう他人と話すのをやめよう。


怒ってないよ。誰にも、怒ってない。

神様は守ってくれなかったけど、
まだあの秘密は誰にも言ってないし、言えない。
だから、まだ守ってくれる、よね?



はっ、と目が覚めたら、したいことが何も無かった。

相談…って誰にするの?
誰とも話せないというのに。

「…かみ、さま……?」

返事などない。あるわけが無い。
これは僕が作り出した幻想。空想上の友達なのだから。



己の弱さを痛感した。
初めは泣くのがもう嫌で、それにただ耐えたかっただけなのにな。

捨てられない紙くずの前で涙を流す。
誰も知らない、見ることもない涙。
泣き疲れて、途方にくれて、
諦めようにも、こんな臆病な僕じゃ無理な話だった。

これからどうしたらいい?
神様に頼れなくて、誰にも頼れなくて、残るは僕一人。

じゃあ、もうこうするしかないね。
ねぇ?そこから僕の頑張りを見てて欲しいな。神様。



4/12/2024, 4:48:42 PM


幼い頃、自分の機嫌で天気が変わると、本気で思っていた。

雨が降っていれば、泣いていて、
笑っていれば、快晴になった。

無邪気な考えは時と共に忘れ去られていく。
空模様が人の機嫌など関係無く、自然に移り変わっていく様に。

それでもたまに、ふと思うことがある。
もし空模様が、君のご機嫌で変わるなら、
離れていてもすぐに知ることができるのに。

もちろんそんなことは起こらないけども。
どうか君の遠くの空が、晴れやかでありますように。

Next