湖楠*

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8/25/2024, 5:03:44 PM

僕は書く。

言いたいことを頭の中で纏めて……、
というよりも、独り言の感覚に近いかもしれない。
なんせ、浮かんだ言葉をそのまま吐き出しているのだから。

そんなことはどうだっていいんだ。
君だって、本当は僕だって。
もっと大切なことが、ある。

そう、この物語の中身だ。

……そうだろう?

だけど、この物語が終わるまで、
僕はずっと1人で演じているばかりだ。
この舞台の中で、
僕は演じる僕と永遠に向かい合っていた。

……もう飽き飽きだ。

それでも、演らなくちゃ誰にも会えない。
辞めたら、もっと寂しくなるだけだ。

だから、

伝えたいことを必死で纏めて、
伝わらなくても全力で演じる。

そうやって、また画面の中、
1人分の椅子に掛けて、僕は吐き綴る。

中身のないこの物語を、
向かい合う誰かが見てくれるまで。

5/26/2024, 8:17:37 AM

視線の先には、ずっと遠く遠くまで続く水。
空から止まることない涙が落ちてくる。

水と水、触れる度に跳ね返って。
僕は何もせずただ見ていた。

まるで同じ時を繰り返しているみたい。
叶うことならずっと見ていたい。

こんな綺麗な景色、晴れてしまうには勿体ない。
まだ隣に誰も居なくていいから。
だからどうか、もう少しこのままで。

5/9/2024, 9:43:22 AM


大学4年の春。
いつも学校へ向かうバス停。
近くの家の桜が満開だった。

入学してすぐ、地面が見えなくなるくらいに、花が舞って、
感動したのを、今でも覚えている。


「それからは、毎日楽かったな…。」
ふと、言葉を零して思う。
ずっとここにいたい。って。

でも、それは叶わない願いで、
1年後はもう別の場所にいるんだ。

そう、風にさらわれる花びらを見ながら思った。



次第に時が経って、就活が忙しくなってきた。
大学も週に1、2回に行くくらいになってしまった頃。

いつもの様にバス停で、バスを待っていた。
けれど、いつもと違う。
あの桜の絨毯を作る家が、取り壊しの工事に取り掛かっていた。
あの桜も切られて、見る影もない。


「ああ、1年後またあの風景を見れないんだな…」

自分がもうここに来れないことも悲しいけれど、
それ以上に入学時、私の心を晴らしてくれた、
あの風景に二度と会えないことが悲しかった。


1年後、私はまた別の場所で満開の桜を見る。
けれど、あのバス停にもう桜が降ることは叶わない。
でも、あの景色を忘れることはきっとない。


5/8/2024, 5:05:23 AM

なんてことない日だった。

今日は2人とも休日。
あなたは、リビングのソファでテレビを見ていた。
いつも通りの朝の光景だ。


「ルームシェアをしよう」
高校生の時に2人でふざけあって決めたこと。
あの時は、お互い冗談半分だったけど、
それが今、叶っている。


「おはよう」
私は寝ぼけ眼を擦りながら、言う。
「おはよ、凄い寝癖だよ?」
「嘘!」

あなたの笑い声をよそに、急いで自分の部屋へ。
ドレッサーの鏡で確認する。
こりゃまぁ、凄い。まるでメデューサのようだ。

私の部屋はリビングのすぐ隣。
「あぁもう」
不満を小さく零しながら、ドレッサーの前に座る。


ここは好きだ。
ドレッサーの鏡を少し動かして、
髪の後ろまで見えるようにする。

と、リビングでくつろぐあなたが少し見えるから。

誰も知らないあなたを、ひっそり盗み見ているようで。


ただ、今日は違った。
いつも気づかれていないから大丈夫だと思ってたの。
だけど、あなたが鏡越しこちらを見て、目が合った。

今までだって、何回だって、
目を合わせてたはずなのに、
とっても驚いてしまって、目を逸らした。


その日からずっとあなたは親友とはどこか違っていた。
でも、かけがえない人で、
思うよりも、そっと恋をしたんだって、
その時は気づかなかったけど…。

それが初恋の日だったんだ。
って今更気づいたんだ。






4/30/2024, 4:33:03 PM


ここは展覧会。
誰もいない。私だけがいる。


絵が飾ってある。

例えば、
荒廃した街で1人、煌びやかに踊るあの子。
誰もいない寂れた商店街で、眠る2人の少女。
モノクロの世界で、唯一鮮やかなキャンバス。

例えば、
路地裏から見上げる、あの狭い狭い青空。
空の病室から満開の桜を眺める彼。飛び立った鳥。


そして、また真っ白なキャンバスを目の前に置く。


「話」の描き方なんて知らない。
伝わらないものばかりかもしれない。


それでも、また筆を執って、
ただ想った好きな景色を、描き出すだけ。

ここが私の楽園。
どうぞご覧くださいませ。

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