そうだ、神様へ手紙を書こう!
そう小さな僕が思いたったのは、泣き虫な性格を直すためだ。
どっかで聞いた話。
神様は僕たちのこと守ってくれてるんだって。
だからお手紙を送って、それで仲良くなって…
神様と僕だけの秘密の関係を作るんだ。
秘密を守るかわりに、僕のことを守ってくれるって
信じていた。
また良くないことが起こった。
他人とどうやって話をしたらいいか分からない。
自分がやりたいことを言えず、流され続けた。
なにを考えているか分からないと言われた。
誰かを傷つけた、自分も傷ついた。
もう他人と話すのをやめよう。
怒ってないよ。誰にも、怒ってない。
神様は守ってくれなかったけど、
まだあの秘密は誰にも言ってないし、言えない。
だから、まだ守ってくれる、よね?
はっ、と目が覚めたら、したいことが何も無かった。
相談…って誰にするの?
誰とも話せないというのに。
「…かみ、さま……?」
返事などない。あるわけが無い。
これは僕が作り出した幻想。空想上の友達なのだから。
己の弱さを痛感した。
初めは泣くのがもう嫌で、それにただ耐えたかっただけなのにな。
捨てられない紙くずの前で涙を流す。
誰も知らない、見ることもない涙。
泣き疲れて、途方にくれて、
諦めようにも、こんな臆病な僕じゃ無理な話だった。
これからどうしたらいい?
神様に頼れなくて、誰にも頼れなくて、残るは僕一人。
じゃあ、もうこうするしかないね。
ねぇ?そこから僕の頑張りを見てて欲しいな。神様。
幼い頃、自分の機嫌で天気が変わると、本気で思っていた。
雨が降っていれば、泣いていて、
笑っていれば、快晴になった。
無邪気な考えは時と共に忘れ去られていく。
空模様が人の機嫌など関係無く、自然に移り変わっていく様に。
それでもたまに、ふと思うことがある。
もし空模様が、君のご機嫌で変わるなら、
離れていてもすぐに知ることができるのに。
もちろんそんなことは起こらないけども。
どうか君の遠くの空が、晴れやかでありますように。
朝が怖い
人々が嫌でも頑張っていることを
知らしめられるから
夜が怖い
明日も当たり前に夜は来るっていうのに
孤独が襲うから
今に始まったことじゃない
世界は舞台じゃないって
NPCはここにはいないって
知った時から
もう誰も信じられなかった
自分の力でだって
飛び降れなかったから
心の汚れをずっと抱えている
拭えないまま
拭う方法も分からないから
拭う方法を
自分で自分を救う方法を
ずっと探し続けている
これからも、ずっと
今日も公園で君を待っている。
息苦しい生活にも、この時だけは落ち着ける。
ブランコの軋む音で、時間を刻む。
君と会ったのは、この公園。
休日、家に1人でいるのが辛くなった時に、
ここで心を落ち着けていた。
そしたら、君が話しかけてくれた。
やがて、休みの日はほとんどここで過ごすようになった。
ただ他愛のない話ばかりする。
職場の愚痴だったり、美味しかった料理の話とか。
君も奇抜な人がいただとか、晩御飯の香りの話とかを。
そしていつも日が沈む前に別れる。
最近、君が来ない日がある。
なんだか忙しそうだった。
日が沈みそうだ。今日も来なかった。
「さて、帰るか」ため息をつきながら、立ち上がる。
目線をあげた先には君がいた。
「ごめん、遅くなった」
走ってきたんだろうか、君は息を切らしながら言う。
「これを、渡したくって」
よれた手紙をもらう。君が恥ずかしそうに笑った。
「じゃあ、帰るね」
僕から離れていく。
「えっ、ちょっと、まっ…」
君が逃げた先に夕日。
眩しくって、君の手を掴めなかった手で光を遮った。
君が大きく手をふる。笑顔で。
きっとまた会えるって確信していた。
君のことなんにも知らないのに。
君からもらった手紙を開く。
そこには、君の秘密が書かれていた。
数年前、交通事故にあったこと。
もう実体ではないこと。
人々の記憶から忘れさられれば、消えてしまうこと。
最後に綴られていた言葉は、
「君に私が見えたことは、本当に奇跡だったんだ、ありがとう」
あの日、夕日を背に笑う君が忘れられない。
逆光でほとんど見えないはずなのに、
君の笑った顔が見えたのは、夕日が透けていたから。
横断歩道を渡る前、何も無い電柱に花を手向けていた。
この街の誰もが君を忘れても、僕は君を忘れない。
いつも思いつくまま描いていた。
どんどん書き溜めていった。
誰にも見せるつもりなどない作品。
自分にとって「満足」な仕上がり。
だから、変な期待をして作品を投稿した。
みんなが読んでくれて、とっても嬉しかった。
また読みたいと反応してくれる人もいた。
こうなると自然と読者側を考えてしまう。
作ったシナリオたちは他人にとって面白いかどうか。
書いては消し、書いては消しの繰り返し。
だんだん何故か苦しくなっていった。
きっと誰もが当たるであろう問題。
自分も再三、ぶち当たってきた。
でも、この答えはもう知っている。
自分が書きたいものを書けばいい。
それでいい。それでいいんだって。