誰もがみんな毎日を頑張っている。
頑張っていない人なんてどこにも居ない。
一日何もできなかったあなた、
ベッドから動けなかったあなた、
朝からぼーっとして気付けば夜だったあなた、
「今日は怠けてしまった」とか、
「今日は何もできなかった」とか、
まして「私はダメ人間だ」とか、
そんなふうに思っちゃあいけない。
あなたは今日一日、
「心と体を休ませる」ことを頑張れたのだ。
体を動かすことだけが「頑張る」ではない。
休むことも、努力のひとつ。
あなたは今日も一日とてもよく頑張りました。
自分で自分を抱きしめてあげて。
日記帳を買った。
どこにも書けず誰にも明かせないことを記そうと思って。
ペンを買った。
秘密を書くには普通のボールペンじゃ味気ない気がして。
机に向かった。
日記帳を広げてペンを手に取り、「私は」と書き始めた。
私は気取っていた。日記の中だけでは素直でいようとしたのに。
ほら、綺麗な字を書こうと指に力が入っている。
どうせ誰にも見せないのに。
見せることなんてできないのに。
誰かが見てもいいように⸺
誰かに見せるつもりでいるように。
私は日記帳を閉じた。
ペン先を仕舞った。
本棚の一番下の段の隅に隠した。
もう開くことはないだろう。
かち、かち、かち、かち。
あの日の思い出が、
かけがえのない思い出が、
愛し合った日々が、
挫折し涙した夜が、
喜びに抱き合い歌った朝が、
一秒一秒、遠くなって、いく。
かち、かち、かち、かち。
あの人はドライだ、とか
あの人は感情を表に出さない、とか
そういうふうに言われる人はきっと心の器がとてもとても広いだけだと思う。
どんな人も心は器の形をしている。
感情的な人はそれが小さなグラスで、
起伏が激しい人は日によってグラスだったりどんぶりだったり。
その器に思いがとくとく注がれて、
あっという間に溢れるのかどうなのか。
きっと、それだけの話。
あなたは?
キスに表情をつけるのが巧い人がいる。
情熱的だったり、親愛の証だったり、挨拶代わりだったり、時にはお別れの挨拶だったり。
その唇に私の唇が重なる、ほんの一瞬。
その人の美しい思い出や深い傷を見る。
唇が、語る。