生まれたときから持て囃された。一歳になる前に読み書き全般と走れるようになっていた。辺鄙なところだったからすぐにそのことは伝わった。麒麟児だとか街始まってからの才児だとか言われた。小学校に上がるまでは少し天狗になっていた。
だが小学校に入学すると何も考えずに自分を褒め称えた取り巻きたちが自分を遠ざけ始めた。何故かと理由を聞くと「何でもできてしまうから、勝負にならないと言われた。」
そういうものかと思いその取り巻きたちと関わる事をやめた。そうして小学校を卒業して小学校の同期と遭遇するのが嫌だったから遠く離れた名門中学に入った。思春期に入ったからか今まで遠ざけられていただけだったのに陰湿な嫌がらせへと変貌した。相手にするのも馬鹿馬鹿しかったので無視した。同じような繰り返しでどんなエリートでも結局は人間なんだなと実感できた学生時代だった。
社会に出ると最初は業績をバンバン出してもの凄い勢いで出世していったが自分を妬む人の手によって社会の不適合者として追い出されてしまった。
そうしてみすぼらしく生活して目立たない人生を歩んだ男が私だよ。そうキセルを吹かせながら老人は言った。その後に「いいか?少年、特別と異質は紙一重なのだよ」と俺に言ってきた。そう人生の苦痛を刻んだ彼の皺と見上げている彼の瞳を見ていると彼を俺は「特別な存在」だと思った。
この物語はフィクションです。
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お題特別な存在
コトンコトンと揺れるタクシーの中で外の景色を眺めていた。眩しい夕日に目を細めながら今までの事を振り返っていた。事の発端は一週間前に会社をリストラされた事だった。やってもない言い掛かりをつけられた私はなけなしのお金で奈良まで観光に来ていた。
「お客さん、着きましたよ。」という運転手の声で自分の意識は覚醒した。目を覚ますと見渡す限りの鹿が見えた。タクシーに料金を払って外を出て早速奈良公園へと向かった。奈良公園に居る野生の鹿は人懐っこく鹿せんべいを持った人間に臆する事なく突進してくる。そんな鹿を撫でながら自然の景色を眺めて居ると何故か壮大な気分に陥った。世界では今も泣いたり笑ったりしている人がいて死んでる人や生きている人がいる。各地では戦争があって敵兵の弾に当たって1人の子供の父が死ぬ。そんな目まぐるしく動く地球の中に自分がいる。なのにこんなにも落ち着いてられる。人間って不思議だ。いつか死ぬって分かってるのにその死を受け入れてただひたすらに生き続ける。ありきたりかもしれない。でもそれで良い。ありきたりがこの世界なのだから。私は赤く焼けている夕日を眺めながら呟いた「バカみたい」
この物語はフィクションです
お題バカみたい