#88「電話」
うす闇の夕焼けの中で
スマホが光るのを待っている
かなしいな
一人で過ごす時間は
無限の時がゴミ箱に収まっている
もったいないから、君の声が聞きたい
でもできないから、君の文を見つめる
こういう時むかしだったら
電話をする口実なんか、要らなかったのに
あいたいな
ほんの少しの気持ちが
ゴミ箱の中で震えて、輝いた
#87「君の名前を呼んだ日」
オー・ラリー
オー・ラリー
ワタシの口が踊っている
バレエの少女に憧れて
スケートの王子に夢を見る
魔法はなかなか覚めなくて
ワタシはただただ踊ってる
オー・ラリー
オー・ラリー
王子が消えても輝いて
氷のように鮮明に
こころの響きが透明に
お伽の世界はどこにある
魔法の呪文はここにある
オー・ラリー
オー・ラリー
ずっと君を探している
#86「歌」
さぁ!歌を歌おう!
この世は宇宙で最大のミュージカル劇場だ!
オレは平凡だ
メイクアップも適当だ
神は残酷だ
運命には逆らえない
アイツが飽きたら
俺はみじめに死んでいく?
ふざけるな!
まさか俺を舐めているな
さぁ!今に見ていろ!
飽きることのない最高のエンターテイメントを!
俺の輝かしい最後は拍手喝采!
アイツは感動に震えるだろう
さぁ!さぁ!さぁ!
歌を歌おう
俺は今、生きているのだから
#85「記憶の海」
はて、いずこへ?
よせて、かえす波に手を浸しているような
そんな意識から我に返る
海馬が、壊れた玩具のブリキのように
ギギギと繰り返し音を鳴らしている
もはや錆びてしまったブリキは
終わりのない水平線をなぞるだけであった
そこへ、わたしと名乗るものは問うた
「貴方は、まさか死んでいるのではあるまいな」
いやぁ、ね。
実はわたしも思っていたよ
思い出を持たない記憶の海は
はっきりいって…
はて、いずこへ?
#84「静かなる森へ」
ハイホー ハイホー
おうちへ帰ろう
しんしんと湿気を帯びた森が
きみの体温を奪っていく
ハイホー ハイホー
もうお疲れさま
生き物はとうにいない
それなのに静けさがうるさい
ハイホー ハイホー
きみとふたり 白い息がひとつ
月が綺麗だねぇ
掘り返した土の匂いが広がる
静かなる森
ハイホー ハイホー
帰ろうか
ぼくらのおうちへ