北極星は、南の形を夢見た

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5/3/2025, 10:31:30 AM

#83「青い青い」

ケツの青いガキだから
この気持ち、分かんないけど

2人で1つの自転車に乗って
雨上がりのアスファルト
水溜まりに写った空に、俺らが走っている

「これでよかったんかも、しれへんなぁ」
「なんてーー!?」
「なんでもあらへんー!!!」

雲一つない青い青い空

この空の下でコイツが笑っているのなら
世界で一番、俺は幸せだ

4/28/2025, 1:39:33 PM

#82「夜が明けた。」

たぶん、もう少しなのだろう

夜が明けるとき
耳をそばだてて聞くのだ
この世の静けさを

すずめの鳴き声
小学生の元気のいい声
ゴミ収集車の軽快なメロディー

それが小さな幸福と思えるなら
きっと今日も素敵な日になるはずだ

だから幸せに長生きしてね

病院のベットで横たわって
そう願っていた

4/27/2025, 10:47:40 AM

#82「ふとした瞬間」

生きるということは無意識に行われる
それなのにどうして こんなにも難しい

脳全体が使われるのは2%
大体は仕事でオーバーしている
机に突っ伏して ふとため息をついたとき

ならば残り98% ぼくはきっと

きみのことを 想っているんだろう
だからいつもパンクするのか
なんて バカなことを考えていた

息を吸う 目を閉じる あくびをする
たったこの瞬間で思い出される

「記憶」のパッチワークを繋いで
「愛情」という色鮮やかな刺繍を縫った
「思い出」のことを

ふとした瞬間に感じる愛おしさ

「仕事、がんばろ」

4/26/2025, 11:05:13 AM

#81「どんなに離れていても」

「知っとる?月ってな 一年に3cmくらい地球と
離れてるらしいで」

博識な人と別れた
とても大切な人だった

その言葉を 最後に別れ話をして
 その言葉は  私を宇宙に駆り立てて
  その言葉で   宇宙旅行に旅立った

「月から見た地球は 意外と小さかったよ」

ストレス発散に旅行に来たのに
まだ彼を思い出すように話しかけている

羨ましいなぁ

地球と離れても そのときそのとき 良い距離感で
良い具合にバランスを取っている月

諸行無常 いつか月か地球が壊れるだろう
バランスが保てなくて 離れてしまうだろう

だけど 終わりまで一緒にいようとする天体は
人間からしたら一途のように見える

だから月に恋をする

月みたいに 私はずっと 少しずつ
何度も まわって 見えなくなって 繰り返して

あの日の思い出に目を眩ましていた

お願い 目の前を流れるデブリだっていいから

「遠くから見ていた私からは憧れの人を追って
努力する君は 月みたいに輝いていた」
って伝えてあげて欲しいな

もう遅いか

地球からずいぶんと離れて
ロケットは 月への到着をアナウンスした
横たわって 私は物思いにふける

離れたって君を見つけられる
いつか また地球で会えると思う

でもさ

やっぱり近くで 君の笑う顔が見たいなって
それだけだよ

それだけ

4/23/2025, 1:00:41 PM

#80「どこに行こう」

春が来た 春が来た
どこに来た

もう二度と来ないよ

春は、父によって殺されたから

取り返しのつかないことになった
殺人現場を見た家族は 宇宙人になってしまった
忘れてしまったんだ 私が殺されたことを

死んだ次の朝
私は生きていて 
家族と一緒に食べたのだ
私を殺した父が作った
特製ペペロンチーノを

それは死にたくなるほど、おいしかった

日常は無理やり 4月18日を私だけが繰り返す
精巧なレプリカのしあわせ
みんなだけが、物語のその先の

めでたしめでたしに、いるみたいだ

桜の木の下の死体みたいに
強烈な違和感は塗りつぶされて
そらがきれいだ

殺されたことを嗤っている
どこに行っても
もう春は来ないのに、と

悲しいかな、レプリカを愛するしか私には

けれど今
私はあえて殺さなかった
鼻唄を歌う父を

もし、もしもほんとうに春が来るとして
そこに父がいなかったら

わたしの慰謝料を払ってもらえないから

そうしたら、桜を見ようね
どこにでも行ける自由っていうのは
きっと最高の復讐だから

だから、生きていてよかったんだ

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