北極星は、南の形を夢見た

Open App
5/13/2025, 10:41:32 AM

#85「記憶の海」

はて、いずこへ?

よせて、かえす波に手を浸しているような
そんな意識から我に返る

海馬が、壊れた玩具のブリキのように
ギギギと繰り返し音を鳴らしている

もはや錆びてしまったブリキは
終わりのない水平線をなぞるだけであった

そこへ、わたしと名乗るものは問うた

「貴方は、まさか死んでいるのではあるまいな」

いやぁ、ね。
実はわたしも思っていたよ
思い出を持たない記憶の海は
はっきりいって…

はて、いずこへ?

5/10/2025, 10:31:13 AM

#84「静かなる森へ」

ハイホー ハイホー

おうちへ帰ろう

しんしんと湿気を帯びた森が
きみの体温を奪っていく

ハイホー ハイホー

もうお疲れさま

生き物はとうにいない
それなのに静けさがうるさい

ハイホー ハイホー

きみとふたり 白い息がひとつ
月が綺麗だねぇ

掘り返した土の匂いが広がる
静かなる森

ハイホー ハイホー

帰ろうか
ぼくらのおうちへ

5/3/2025, 10:31:30 AM

#83「青い青い」

ケツの青いガキだから
この気持ち、分かんないけど

2人で1つの自転車に乗って
雨上がりのアスファルト
水溜まりに写った空に、俺らが走っている

「これでよかったんかも、しれへんなぁ」
「なんてーー!?」
「なんでもあらへんー!!!」

雲一つない青い青い空

この空の下でコイツが笑っているのなら
世界で一番、俺は幸せだ

4/28/2025, 1:39:33 PM

#82「夜が明けた。」

たぶん、もう少しなのだろう

夜が明けるとき
耳をそばだてて聞くのだ
この世の静けさを

すずめの鳴き声
小学生の元気のいい声
ゴミ収集車の軽快なメロディー

それが小さな幸福と思えるなら
きっと今日も素敵な日になるはずだ

だから幸せに長生きしてね

病院のベットで横たわって
そう願っていた

4/27/2025, 10:47:40 AM

#82「ふとした瞬間」

生きるということは無意識に行われる
それなのにどうして こんなにも難しい

脳全体が使われるのは2%
大体は仕事でオーバーしている
机に突っ伏して ふとため息をついたとき

ならば残り98% ぼくはきっと

きみのことを 想っているんだろう
だからいつもパンクするのか
なんて バカなことを考えていた

息を吸う 目を閉じる あくびをする
たったこの瞬間で思い出される

「記憶」のパッチワークを繋いで
「愛情」という色鮮やかな刺繍を縫った
「思い出」のことを

ふとした瞬間に感じる愛おしさ

「仕事、がんばろ」

Next